「父」を描いた映画が続々と公開中(AERA 2019年6月17日号より)
「父」を描いた映画が続々と公開中(AERA 2019年6月17日号より)
「父」を描いた映画が続々と公開中(AERA 2019年6月17日号より)
「父」を描いた映画が続々と公開中(AERA 2019年6月17日号より)
「父」を描いた映画が続々と公開中(AERA 2019年6月17日号より)
「父」を描いた映画が続々と公開中(AERA 2019年6月17日号より)
「父」を描いた映画が続々と公開中(AERA 2019年6月17日号より)
「父」を描いた映画が続々と公開中(AERA 2019年6月17日号より)

 父の日を前に、父子関係や、父親の楽しさや苦労を描いた映画が続々と公開されている。いま、映画で父はどんなふうに描かれているのか。父と子のあり方を映画から探る。

【「父」をめぐる映画が続々と公開】

*  *  *

 6月16日の父の日を前に、「父」をめぐる映画が続々と公開されている。

「パパは奮闘中!」(公開中)は、ある日突然、妻が家出をしてしまい、残された夫が2人の子を抱えて奮闘するベルギー・フランス合作映画だ。妻の家出により育児に奮闘する父親を描いた映画といえば、名作「クレイマー、クレイマー」(1979年)がある。仕事優先の生活を送っていたテッド(ダスティン・ホフマン)は、妻のジョアンナ(メリル・ストリープ)に息子を置いて出ていかれてしまう。家事と育児を妻に任せきりにしていたテッドは当初は悪戦苦闘するが、次第に息子との絆を深めていく。

「70年代はウーマンリブなどで女性の自立が叫ばれ始めた時代。『クレイマー、クレイマー』は時代を先取りしていて、だから面白かったのです」

 そう指摘するのは、映画評論家の黒田邦雄さんだ。「クレイマー、クレイマー」が公開された70年代、多くの日本人にとって「一人で子育てに奮闘する父親像」は身近なものではなかったが、今や珍しいことではない。だが、妻が出ていったとたんに“家庭”が成り立たなくなる状況は、今の日本社会でも見られる。40年を経ても同じテーマを扱っていることは興味深いと、黒田さんは言う。

「男であることと、よい夫や父親であることはイコールではない。『パパは奮闘中!』はギヨーム・セネズ監督自身が離婚で子どもを引き取った体験がもとになっていて、『父とは、男とは何か』という問いを投げかけている今日的な作品だと思います」

 現実にさまざまな父親が存在するように、映画のなかの父親像もさまざまだ。

「Girl/ガール」(7月5日公開)、「ハーツ・ビート・ラウド」(公開中)の父は、LGBTの子どもに理解を示し、懸命に支える理想的な父親といえる。「ビューティフル・ボーイ」(公開中)の父も、薬物依存症になった息子を決して見捨てない。

 一方で、「ガラスの城の約束」(6月14日公開)に登場するのは、定職に就かず、酒浸りという父。ダメ父の見本に思えるが、幼い娘に与える「一生、人にしがみついては生きられないぞ」などの金言の数々は、実際に作家として成功した娘に大きな影響を与えている。

 父親像が多様化し、現代ならではの難しさが生まれたと指摘するのは、大正大学准教授で男性学が専門の田中俊之さん(43)だ。

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