「会社は人を採用しようとはしていますが、業界全体が人手不足でうまくいっていません。たまに入社する人がいても指導に時間を割かれ、そうしているうちに別の社員が限界を迎えてやめていく。終わりのないトンネルにいるような感覚です」

 このままでは、いずれ自分も限界を迎えてしまう。転職サイトを開くのが日課になった。転職エージェントにも登録し、毎日のように届くメールをチェックする。いい求人さえあれば、すぐにでも転職するつもりだ。

 4月から新生活が始まり、張り切ってスタートダッシュしたものの連休明けにはやる気がなくなる「5月病」はこれまでも多く聞かれた。だが、いまはそれだけにとどまらない。冒頭の例のように余裕のない職場が広がる中、1人の5月病の穴を埋めるために周囲の人までオーバーワークに陥り、メンタル不調に陥ることがある。5月病に影響を受けた「6月病」が広がりつつあるのだ。

 企業カウンセリングなどを手掛けるベリテワークスの代表で心理カウンセラーの浅賀桃子さんは、構造的な問題を指摘する。

「いま欠員をすぐに補充できる会社はまれです。さらに、各企業には独自の慣習や仕事の進め方があります。仮に経験者を採用できても、ある程度自信を持って判断できるようになるには3カ月から半年程度かかります。その間は既存社員に負荷がかかる。人手不足で指導もままならず、その状況から抜け出せなくなる企業が多いのです」

 職場をむしばむ負の連鎖。今年は、特に6月が危険な理由がある。過去に例のない10連休だ。浅賀さんは言う。

「長期の連休明けは不調を訴え出社できなくなる人が多い時期です。休みと仕事の切り替えができない人はもちろん、休み中に冷静に考えて自分の働き方はおかしいと感じる人もいる。逆に、休めなかった人も他人と比べてやる気を失いやすいんです」

 連休明けに出社できなくなった人の影響が徐々に職場じゅうへ広がり、6月に顕在化しかねないというのだ。

 日本能率協会総合研究所の昨年の調査によると、連休明けの5月、20歳以上の男女の約7割が頭痛や倦怠感など何らかの不調を感じていた。そして、そのうちの7割近く、全体で見ても約半数は6月になっても2週間以上の不調が続いたという。不調が続いた割合が多い順に、30代男性、50代女性、40代女性だった。

(編集部・川口穣、小長光哲郎)

※AERA 2019年6月3日号より抜粋