高齢ドライバーによる事故は罪のない人の命を奪い、自らの人生も崩壊させる。生活上、移動手段として必要な場合もあるが、都市の高齢者が本当に車を持つべきか、いま一度考える機会にしたい。
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また、高齢ドライバーによる痛ましい事故が起こってしまった。4月19日、東京・池袋で87歳男性の運転する車が暴走し交差点に進入、歩行者を次々とはね、自転車に乗っていた母娘の2人が亡くなった。
近年、交通事故の死者数は減少傾向が続くが、高齢ドライバーによる死亡事故に限ればほぼ横ばいだ。警察庁のデータによると、2017年にあった75歳以上のドライバーによる死亡事故は418件。免許を持つ人10万人あたり7.7件で、75歳未満の3.7件と比べて2倍以上にあたる。80歳以上では10.6件とさらに増加する。高齢運転の危うさがわかる。
『高齢ドライバー』(文春新書、共著)などの著書がある立正大学の所正文教授(61)によると、高齢運転者の事故には特徴があるという。
「若年層と違い、高齢者は交差点内での事故が多いのが特徴です。これは、年齢が上がるごとに複雑な課題に対する反応が遅れたり、動作を間違えたりするという特性で説明できます」
青信号になったらアクセルを踏む、赤ならブレーキ、といった単純な動作なら、実は年齢による反応速度の差が大きくない。20代と70代で0.1秒しか変わらないという実験結果もある。認知機能に問題がない前提で、交通量が少なく、危険な所も熟知している走り慣れた道ならば高齢であっても危険性は極端に高くはないそうだ。しかし、課題が複雑になればなるほど高齢者の反応は遅くなり、その上間違えやすくなる。
「あらゆる方向から人が歩いてきて車通りも多い都心の交差点は“複雑な課題”の典型例です。免許更新時の認知機能検査で問題がなくても、高齢者がこんなところを走るのは無謀運転そのものです」
もう一つ、高齢者に多いのが「過信」だ。所教授は言う。