「OBでもない個人からの寄付がこれだけ集まるのはCFならではでしょう。ほかの事業と比べ、金額も圧倒しています」
東京藝術大学も積極的にCFに取り組む大学の一つだ。学長の澤和樹さん(64)は「毎年運営費交付金が減らされていくなか、様々なプランがあっても諦めることが増えていた」。
例えば、CFで戦没学生の作品を現代に復活させるプロジェクトを成功させた。他にも、
「16年に『最後の秘境 東京藝大』(新潮社)が話題になったように、私たちの学校はよく理解されていない部分もあった。CFによって東京藝大の取り組みを世の中に発信できたことも、大きな収穫です」(澤学長)
大学でCFが成功するのは何故なのか。日本ファンドレイジング協会(東京都港区)代表理事の鵜尾雅隆さんは言う。
「大学自体の予算規模は大きく、個人の寄付がどのように使われるか不透明だった。CFの良さはそれを見える化し、支援者はリターンのほか、一緒にプロジェクトに参加している一体感を得ることができるのです」
先述の筑波大学は使途や成果の見える化で、CF以外でも大きな寄付獲得に成功している。
3カ月に1度のペースで近隣の企業経営者などを招いた「学長を囲む会」には、毎回、150~200人が集まる。同大教授などの講演に続き、永田恭介学長を囲んでの会食だ。寄付を担当する事業開発推進室の職員も加わり、筑波大学の魅力を伝えていく。前出の山田室長は言う。
「地元企業の経営者の方などと会食に行くことも増えました」
関彰商事(つくば市)は16年、人工芝やアメリカンフットボール用のゴールポスト設備1億5千万円分を現物寄付した。関正樹社長はこう話す。
「大学が積極的に声をかけてくれるなかで、寄贈を通して地域に貢献できるのは嬉しい」
私立大学も補助金の減額により、寄付などによる外部資金の獲得が課題になっている。
寄付収入では私大トップの慶應大学は4月、寄付金に関する専用ページをリニューアルした。その目玉は、大学や卒業生に関する記事の発信だ。慶應義塾基金室の小島与志生室長は言う。
「慶應義塾の現況や卒業生の活躍を社会に伝え、卒業生などと積極的にコミュニケーションをとっていきたい。その結果として寄付につながるのだと思う」
ここでもキーワードはやはり「見える化」だ。(編集部・澤田晃宏)
※AERA 2019年5月13日号より抜粋