試食した5種類の完全食(AERA 2019年4月22日号より)
試食した5種類の完全食(AERA 2019年4月22日号より)
日清の「All-in PASTA」のボロネーゼソース。どこか懐かしい味わいだ(撮影/写真部・東川哲也)
日清の「All-in PASTA」のボロネーゼソース。どこか懐かしい味わいだ(撮影/写真部・東川哲也)

 日清食品が3月27日、「完全栄養食」とうたう「All-in PASTA(オールイン パスタ)」を発売した。WEBでは、2カ月分を想定したストックが約5時間で完売したといい、予約販売のみを受け付ける状態に。。「手軽に美味しく栄養を取れる」完全食が流行しつつある、この時代ならではの背景とは一体なんなのだろうか?

【写真】日清の「All-in PASTA」のボロネーゼソース

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 かつて「完全栄養食(完全食)」という言葉は、卵や牛乳などの栄養価の高い食品を指した。だが13年、米シリコンバレーで「体に必要な全ての栄養素が摂取できる」とする「complete meal」が食事に時間や労力を割きたくないエンジニアに流行したころから定義が変わり始めた。

 16年4月、この流れを受けて日本で最初に発売された完全食が「COMP(コンプ)」だ。粉末タイプで、水などに溶かして飲む。

 開発のきっかけは、企画販売するコンプ代表の鈴木優太さん(35)自身の体験だ。医薬化学メーカーの研究者だった鈴木さんは、仕事や趣味に熱中するあまり、菓子やカップ麺、カロリーバーなどで食事をすませよく体調を崩していた。シリコンバレーの完全食ブームを知ったときは「自分の求めていたものだ」と思ったという。だが日本未発売で入手のハードルが高く、日本人の栄養基準とも異なる。自身が化学と薬学の研究者であったことから、自宅アパートで開発を始め、クラウドファンディングなどで資金を集めて起業した。

「誰かと一緒に時間をかけて美味しいものを楽しむ娯楽性の高い食事もあれば、一人で素早く機能的にすませる食事もある。メリハリをつけて活用してもらいたいですね」(鈴木さん)

 完全食は健康意識の高いユーザーに受け入れられ、コンプのECサイト購入者数は4万人に達する勢い、「BASE PASTA(ベース パスタ)」は累計49万食を売り上げているという。だが一般的な認知度はまだ高くない。日清の参入について、鈴木さんはこう話す。

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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