「考えるほど平和じゃない」石田衣良、小説で伝えたい戦争のリアル (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「考えるほど平和じゃない」石田衣良、小説で伝えたい戦争のリアル

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濱野奈美子AERA#読書
石田衣良(いしだ・いら)/1960年、東京都生まれ。97年『池袋ウエストゲートパーク』でオール讀物推理小説新人賞受賞。以降、多くの話題作を執筆。直木賞ほか文学賞受賞も多数(撮影/写真部・加藤夏子)

石田衣良(いしだ・いら)/1960年、東京都生まれ。97年『池袋ウエストゲートパーク』でオール讀物推理小説新人賞受賞。以降、多くの話題作を執筆。直木賞ほか文学賞受賞も多数(撮影/写真部・加藤夏子)

 小説家の石田衣良さんによる『不死鳥少年 アンディ・タケシの東京大空襲』は、アメリカ人の父と日本人の母を持つ少年が、東京大空襲を経験するまでの4日間をつづった物語だ。石田さんに、同著に込めた思いを聞いた。

*  *  *
 常に新しいジャンルに挑み続ける作家・石田衣良さんが新作で描くのは、一夜にして10万人の命が失われた東京大空襲である。石田さん自身の母親も体験者で、高校生の時に一度だけ話を聞いたことがあった。

「衝撃でした。一晩で、焼死体を丸太のように飛び越えられるようになったと聞いて。うちの母は本当によく生き残ったと思います。なんで自分たちが逃げる先ばかりに焼夷弾(しょういだん)が落ちるんだろうってみんな思っていた。でも、そんなことはなくて東京中にばらまかれていたんです。通り一本向こうが炎の壁になって先が見えなくて、そっちに行って生きられるのかどうかわからなかったっていう証言がいっぱい残っているので」

 いつか書こうと資料を集めだしたのは40代半ば。それから10年以上の年月を経て、アメリカ人を父に日本人を母に持つ日系2世の中学生・時田武の物語として結実した。

「彼は父の国のB29も憎めないし、日本も憎めない。それなのにアメリカにいても弾かれるし、日本にいてもスパイだと言われる。どこにも逃げ道がない。その中で『お前が家族を守るんだ』と言われて頑張る子です。本当に健気なんですよ」

 空襲にいたるまでの3日間、当時の中学生の日常が描かれる。彼らは大人たちから理不尽な扱いを受け、おなかいっぱい食べることもできず、奉仕という名の労働に明け暮れる。そんな生活の中でも、彼らは友情を育み、恋をし、夢を語る。そしてそんなささやかな幸せは、圧倒的な軍事力によっていとも簡単に押しつぶされてしまう。

「僕はこれを反戦小説だと思って書いてはいないんです。過去にこういうことが起こった、または起こり得たかもしれない、僕にとっての戦争の形をひとつ世の中に出せればいいと思っているんです。とにかく、読んだら何か心に刻まれるじゃないですか。空襲の悲惨さであるとか、当時どういう生活を送っていたのかって。それを元にみんなで考えてもらえばいいんですよね」


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