阪神・淡路、東日本という二つの大震災によって、「予知神話」は揺らいだ。17年8月に国の中央防災会議の作業部会は現時点での「予知」は困難と認め、約40年ぶりに予知を前提とした大震法を見直すことを決めた。

 政府の地震調査研究推進本部も海溝型地震について南海トラフ、相模トラフ、千島海溝、日本海溝沿いの地震発生確率を改訂した。ランクは目安に過ぎないが、「予知頼み」ではなく、最悪の事態に備え、「防災・減災」に舵を切った意味は大きい。

 情報収集や救援で遅れが目立った阪神・淡路の教訓を踏まえ、東日本で政府は地元要請を待たずに物資を送る「プッシュ型」救援をした。自衛隊の救助・救援活動も格段に速かった。

 東日本では関西広域連合が府県別に分担し、東北3県を支援する「ペアリング支援」を始めた。中央主導によらず自治体が連携支援を立ち上げる方法は、首都圏震災の場合に欠かせない。

復旧・復興については阪神・淡路後の98年、議員立法で被災者生活再建支援法ができ、「個人補償はしない」という国の姿勢を転換させた。同じ年には、特定非営利活動促進法(NPO法)もできた。130万人が駆けつけ、「ボランティア元年」と呼ばれた阪神・淡路での救援がもたらした成果だ。とはいえ、巨大災害に向き合う対策は始まったばかりだ。地球温暖化に伴う台風、ゲリラ豪雨などの水害リスクも、今後は高まるばかりだろう。(ジャーナリスト・外岡秀俊)

AERA 2019年4月1日号より抜粋