決勝プレゼンテーションに臨む京都大学2年生のチーム。左から廣江遼さん、キム・セヒョンさん、塩屋智子さん、山東丈将さん(写真:P&Gジャパン提供)
決勝プレゼンテーションに臨む京都大学2年生のチーム。左から廣江遼さん、キム・セヒョンさん、塩屋智子さん、山東丈将さん(写真:P&Gジャパン提供)

 予算300万円のビジネスコンテストの参加者は、大学1、2年生が6割を占めた。 就職活動の枠を超えた動きが、学生の側にも企業側にも生まれている。

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 大学1、2年生から動き始めているのは、インターンシップの現場だけではない。大手企業が行うビジネスコンテスト(ビジコン)で力を試す学生も少なくない。

 P&Gジャパンは昨秋から今年にかけて、主に大学1、2年生を対象にしたビジコンを実施した。テーマは、「P&Gの4ブランドに対する大学生の新規購入者を獲得する」こと。

 優勝チームには300万円の予算が与えられ、4月から3カ月ほどかけて、同社スタッフの助言のもとで実際にマーケティングに取り組むという。大学生を対象にしたビジコンは近年盛んになってきているが、1、2年生を主な対象としたものは珍しく、実際に300万円もの予算を使って実行に移すのもほとんど例がない。

 同じゼミのメンバー4人で参加し、4チームによる最終審査にまで残った京都大学経済学部2年の山東丈将さんは言う。

「マーケティングを学ぶゼミに所属していて、商品の売り方を毎週考えている。それを、実行まで含めた戦略として取り組めるのが自分の学びになると思って参加しました」

 P&Gによると、「採用には一切関係がない」。それでも、全国各地から多数の大学生が参加した。優勝したのは3、4年生のチームだったが、参加者の6割は1、2年生が占めた。同社の松浦香織執行役員は、狙いをこう説明する。

「海外と比べると日本の学生は多様な経験ができておらず、能力の高さの割に実行力が低いケースがある。国際的に通用する強いビジネスパーソンになれる学生を早いうちから育成したいと思い、企画しました。また当社としても、大学生ならではのフレッシュなプランに本気で期待しました」

 学生には新鮮な体験となったようだ。前出の山東さんと同じチームの京都大学2年生、キム・セヒョンさんは、これまでもビジコンには何度か参加したことがある。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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