恐怖のなかで助け合い、互いを思いやり、生き抜こうとする若者の姿は希望も灯す。

「いまアメリカでは銃規制問題に絡めて『全国の高校生にこの映画を見せてはどうか』という話し合いが行われている。若者たちが立ち上がっているんだ。『この状況にいつまでも我慢するわけにはいかない』という意識を持つきっかけになればと思う」

(ライター・中村千晶)

◎「ウトヤ島、7月22日」
2011年、キャンプ中の若者たちを襲った無差別銃乱射事件。その一部始終をリアルタイムとして描く。公開中

■もう1本おすすめDVD 「おやすみなさいを言いたくて」

 エリック・ポッペ監督の長編4作目「おやすみなさいを言いたくて」(2013年)は、戦場カメラマンでもある監督の経験、そしておそらく心情もが多分に反映された珠玉のヒューマンドラマだ。モントリオール世界映画祭審査員特別賞などの賞に輝いている。

 世界の紛争地帯を撮影する写真家レベッカ(ジュリエット・ビノシュ)は、その日も中東のある場所で、自爆テロの準備をし、決行する女性にカメラを向けていた。だが、自身も爆破に巻き込まれて重傷を負う。夫と二人の娘が待つアイルランドの海辺の家に戻った彼女は、家族に「もう危険なところには行かない」と約束させられるが──。

 誰かが撮り続けなければ、世界に真実を知らせることができない。自分の命など惜しくないが、しかし自分の命は自分だけのものではない。自分を必要とする娘や夫のものでもあるのだ。使命感と家族への愛の間で揺れ動く主人公の心境、紛争地帯の生々しいまでのリアルさに、多くを考えさせられる。

◎「おやすみなさいを言いたくて」
発売・販売元:KADOKAWA
価格4700円+税/DVD発売中

(ライター・中村千晶)

AERA 2019年3月18日号