「実際の手紙をほぼそのまま使っているんだ。トニーにとって手紙は心の絆、でも書くのは不得意。逆にドンは孤独で手紙を書く相手はいないが、書くのは得意。トニーが手紙を書くのをドンが助けることで、二人の関係が変わる。意識しないうちに第一印象とはちがったトニーの人間像が見えてくるんだよ。手紙とは互いを理解する、とても素敵な方法だと思うね」

◎「グリーンブック」
1962年、あえて差別が強い米南部にツアーに出る黒人ピアニストとイタリア系用心棒の旅。全国順次公開中

■もう1本おすすめDVD 「ザ・ロード」

「刑事ジョン・ブック 目撃者」(1985年)で映画デビューして以来、俳優として30年以上にも及ぶキャリアを積んでいるヴィゴ・モーテンセン。多くのジャンルを制覇し、父親役も何度かこなしている。

「はじまりへの旅」では、型破りで野性的な父親を演じたが、ここでは文明が滅びた末の地球で息子とのサバイバルの旅をする孤独な父を演じる。「ノーカントリー」や「すべての美しい馬」で知られるコーマック・マッカーシーの原作を、オーストラリアのジョン・ヒルコート監督が映画化。

 文明が滅亡し、食料不足で、人肉を食す人さえ出現するとある未来。主人公の父は息子に人としての誇りと威厳、そしてサバイバルの能力を教え込むことを使命と信じる。健康をむしばまれ、命は長くないからだ。息子の未来は?

 人道主義と哲学的なテーマを追求するディストピア映画。ヴィゴはトニー役とは対照的にやせ細った飢餓状態の父を熱演。「グリーンブック」とは対極にある一本だ。

◎「ザ・ロード」
発売元:ブロードメディア・スタジオ
販売元:ハピネット
価格1200円+税/DVD発売中

(ライター・高野裕子)

AERA 2019年3月11日号