玉城知事は沖縄を巡る現在の政府の対応を「SACOの亡霊にとらわれている」と指摘する。

「SACOのくびきから放たれるためには、新しい協議機関を設置して、辺野古移設の見直しを含む話し合いをするべきだと思います。県民投票で民意が示された今は、その絶好のタイミングです」

北東側の埋め立て予定区域の大浦湾では、広範な軟弱地盤が判明した。県独自の試算では、埋め立てには2兆5500億円の予算と13年半の工期がかかる見通しだが、国は「根拠がない」とはねつけるだけで、総工費も工期も明示していない。

 玉城知事は、1兆円を超える税金が投じられながら終わりのないトラブルの泥沼に沈んだ高速増殖原型炉「もんじゅ」と辺野古を重ねる。

「工事は一筋縄では進まないでしょう。どれだけ予算がかかるかもわからない。辺野古を『もんじゅ』みたいにしてしまいかねないことが今の段階でわかりきっている。そしてその間、普天間の危険性は放置されたままになる。政権は全体の設計図も、予算がいくらかかるかという説明も国民に示さず、できることからやってしまえ、沖縄の民意をつぶしてしまえ、埋め立ててしまえという行動を続けている。これはもう、おぞましさの極致です」

 政府は、安全保障政策は国の専権事項だと強調する。しかし、玉城知事は「安保も民意を無視できるような聖域ではない」と訴える。

「国が『安保は国の専権事項だ』と我々の要求を無視し続ければ、辺野古の工事は進まず、結果的に日本政府は米国政府との約束を果たせない。だから、協議のプロセスで地元の意向をくむことは不可欠なのです」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2019年3月11日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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