自分が好きなBLの世界について描く──それは大事な誰かに迷惑をかけることにならないか。スタジオの生徒の親御さんはどう思うだろうか。逡巡(しゅんじゅん)の末に、「描くこと」を決意する場面は、明るく楽しい本書のなかで静かに読者の胸をうつ。

「実際には、心配していたようなことは何もなかったです。今になってみれば、自分のことが理解されて、普段の生活も楽になりました」

(ライター・矢内裕子)

■書店員さんオススメの一冊

『欲望会議「超」ポリコレ宣言』では、千葉雅也、二村ヒトシ、柴田英里ら各氏が、性欲と社会の間に生じる摩擦を語り合う。リブロの野上由人さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 学生の頃、法学部の講義で憲法や人権とは要するに「変態」を護(まも)るためのものだと聞いた記憶がある。それは、世間ではなかなか理解・受容されにくい少数者であっても「個人として尊重される」という意味だった。

 ポルノグラフィー、フェミニズム、クィア理論に通じた論客が、性欲と社会の間に生じる摩擦の具体的な事例を題材に語り合う本書は、人権思想のひとつの帰結として現代社会に広まりつつある「ポリティカル・コレクトネス」の理念と運動を検証しながら、真に「個人として尊重される」とはどういうことかを掘り下げる人権保障論として読める。

「してはならない」と「したい」の間で、私たちはどのように生きることを望むのか。

 人と同じでないことを恐れるな! 欲望をめぐる賢人会議は「個人」をエンパワーする。

AERA 2019年3月4日号