証券会社の明細を見ると、個別株や債券にも投資している。その内容や配分には見直しの余地が大きいとの指摘があった。

「預貯金は生活費の1年分程度あれば十分です。株や債券も含めると5千万円近い金融資産があるのに、そのうち3500万円が定期預金というのはもったいない。もう少し投資にシフトして積極的に増やすことを考えてもいい」(横山さん)

 この世帯は350万円を個別株に投じているが、すべて株主優待狙いだ。時価総額が小さい小型株が中心で、中には経営にやや不安のある銘柄も……。

「株主優待を受け取る楽しみは否定しませんが、資産運用の柱とするには心もとない。低コストのインデックスファンドを活用して、本格的な分散投資を始めてみては?」(同)

 インデックスとは日経平均株価のような市場平均を示す指数のことで、これらの指数と同じ値動きを目指す投資信託のことをインデックスファンドという。日本だけでなく、米国などの先進国、新興国の株式・債券など指数の種類は多彩。指数を選ぶのが面倒なら、1本で世界全体の株価指数を丸ごと買えるタイプもある。インデックスファンドは機械的に運用されるため、資産から差し引かれる「信託報酬」という運用コストが安い。

「毎月、定期預金に回している58万円の一部を積み立てたり、保険を解約して浮いたお金で運用してもいい」(同)

 支払い中の保険料6万3500円を今から投資信託の積み立てに回し、年2%の運用ができれば、60歳の時点(21年運用)で1986万円になる。

 家計を見ていてもう一つ気になるのは、私立小学校に通う長男の教育関連費が月に10万円を超えていることだ。学費に加えて、バイオリンやスイミングなどの習い事、通信教育を五つも掛け持ちしている。貯蓄は十分にできているので収支の面で大きな問題はないが、子どもの負担になっていないか、横山さんは心配している。

「お子にまっすぐ聞いてみて、もしあまり意欲が感じられないなら、減らしてもいいかもしれませんね」(同)

 もし、母親の背中を見て長男も医師を志すとなれば、文系の大学とは比べ物にならない教育費(私立医学部の平均学費は6年間で2370万円/平成28年度文科省調査)が飛ぶ。油断は禁物である。(ライター・森田悦子、編集部・中島晶子)

AERA 2019年2月25日号

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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