医師ももちろん、HPV検査の有用性を意識しているようだ。アンケートによると、細胞診のみを選択したのは26%に過ぎず、細胞診とHPV検査の併用が70%を占めた。

 HPVの持続感染自体を減らすには、どうしたらよいのか。

「残念ながら、すでに感染したHPVを駆除する薬はありません。ワクチンの接種でHPVによる子宮頸がんの事前病変を90%以上予防できると考えられており、世界では07年頃から導入が始まっていますが、日本ではワクチンを接種する人は1%以下に留まっています」

 女性のがんの中で、罹患者数が最も多いのが乳がんだ。がん情報サービスによると、乳がんの新規罹患数は、年間7万人を超える。死亡者数も17年でがんの中で5位と、増加傾向にある。キャスターの小林麻央さん、漫画家のさくらももこさんなど闘病した有名人も多い。

 乳がんはほかのがんに比べ少し特殊だ。通常、がんのリスクは加齢とともに上がるが、女性ホルモンと関係する乳がんは40代後半でピークを迎え、閉経後リスクは下がる。つまり、注意すべきは30~40代の女性だという。

 現在都内で子育て中の女性(35)は小林麻央さんの訃報に接し、自治体の乳がん検診を受けるようになった。内容はマンモグラフィー(乳房エックス線検査)と視触診だ。

「マンモは痛いと聞いて不安でしたが、我慢できないほどではないので。異常なしとわかって、安心できました」

 だが、このマンモグラフィーには弱点がある。

「乳腺濃度が高い場合、マンモグラフィーではがんが見つけにくく、病変を見逃してしまう可能性があります。そして、アジア人の若い女性は一般的に乳腺濃度が高いといわれています。ですから、乳腺エコー(乳房超音波検査)を併用するのが望ましいのです」(近藤医師)

 乳腺エコーは、乳房に超音波を当ててがんの有無をチェックするというもの。マンモグラフィーとエコーを併用で、40代の女性の早期の乳がんの検出率が上がったという報告もある。

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