かつて地方議員は地元の名士や有力者の名誉職だったが、2000年代以降、地盤・看板・カバンのない、若手の議員が各地でたくさん誕生した。若さやフレッシュなイメージを前面に出して当選する議員が多く、そうした議員へ「上から目線」で接する有権者や支援者が後を絶たないのだ。
ネット社会も、ハラスメントの被害を深刻化させている。メールやSNSで気軽に連絡を取れるようになったことで、しつこいコンタクトに悩む女性議員は増えた。SNSで中傷されたり、ポルノ画像に女性議員の顔写真を合体した写真を拡散されたりといった被害も、現代ならではだ。
●35%が2期目出馬を断念、女性議員連携で乗り越える
女性議員にハラスメント行為をするのは有権者だけではない。
首都圏の女性市議(30代前半)は、議会の視察出張先の宴会で、同僚男性議員から腰に手を回され、胸を触られた。やんわりと手を払いのけたが、誰にも被害を言えなかった。女性区議(30代後半)は、議員同士の飲み会で男性議員が下半身を露出させ、対応に困ったことがあるという。
このようなセクハラ被害は新聞などで報道されることもあるが、氷山の一角にすぎない。先に紹介した内閣府の調査では、セクハラ防止等に関する議員向け研修や勉強会の実施について、「実施されていない」が91.8%、「実施されているが十分ではない」が5.2%で、議員のセクハラに対する意識が低いという問題がある。
三浦教授によると、海外では議員の行動規範を設けたり、ハラスメントに対して政党や議会が相談窓口を設けたりしていて被害者への救済や支援の環境を整えているところもあるが、日本では取り組みがほとんど進んでいない。
そんな中、女性議員が党派を超えてネットワークをつくり、悩みや議員活動のノウハウを共有する動きも出てきている。前出の本目さんは、15年に超党派の議員グループ「WOMAN SHIFT」を立ち上げた。調べてみると、東京都内では、11年の統一地方選で多くの女性議員が誕生したが、20~30代の女性議員の35%が2期目の出馬を断念した現実があった。
セクハラへの悩みを共有した際、メンバーの一人は「写真を撮る際に肩や腰に手を回す人がいたら、その手を握って握手に持ち込むといい」とアドバイス。飲み会にどこまで付き合うか、なども話し合ったという。
昨年、地元の岐阜で女性政治塾を開いた野田聖子前総務相(58)も女性議員同士の連携の大切さを強調する。
「いまハラスメントに悩んでいる人は誰にも言えないでしょう。私も20代、30代のときは言えなかった。男性有権者からお尻や胸を触られるのは日常茶飯事で、性的で高圧的な嫌がらせを受けてきました。すごく屈辱だったし、嫌だと言えない自分が嫌で、忘れようとしてきた。セクハラを受けると『自分が悪かったのかな』『女を売りにしていると勘違いされたのかな』などと自分に責任を感じちゃうんだけど、そんなことはない。いまは女性議員がだいぶ増えて、相談できる先輩もいる。悩んでいる人は私を頼ってほしいな。党派を超えて支えますよ」
(編集部・深澤友紀)
※AERA 2019年2月11日号