昨年、政治分野における男女共同参画推進法(候補者男女均等法)が成立し、今年予定されている統一地方選や参院比例区で立憲民主党が4割以上を女性候補者にすることを目指すなど女性候補者の擁立が進んでいる。ただ、「票ハラ」への対策が手つかずのままでは、女性の政治進出を阻害しかねない。実際に、有権者や支持者による執拗なハラスメントを理由に2期目への挑戦を断念する女性地方議員もいる。

『日本の女性議員 どうすれば増えるのか』などの編著書がある上智大学の三浦まり教授は言う。

「有権者や支援者による女性議員への卑劣なハラスメントは“身内”内で起きるため顕在化しにくく、解決も大変です。特に、地方議員は有権者との距離も近く、秘書などもいないため、すべて自分で対応することが多く、被害が深刻です。女性議員のなり手はまだ多くないのに、せっかく志を持って議員になった人が続かない現実は、女性の政治参画を阻害する。民主主義の観点からも問題です」

●「政治領域は男のもの」背景にある男性の思い込み

 臨床心理士としてこれまで多くの男性の相談に対応してきた濱田智崇・京都橘大学准教授はハラスメントの背景にある男性心理をこう説明する。

「男性の中には、人間関係をパワーバランスでとらえ、相手をコントロールして影響を与えることで『自分は優秀だ』と感じる人が少なくありません。相手をコントロールできていると感じている間は好意を示しますが、相手が自分の思う通りでない振る舞いをした瞬間、自分の存在を脅かすのではないかという恐怖や不安が、怒りや攻撃に変換されます」

 前出の三浦教授はハラスメントが政治分野で起きやすい理由について、

「女性議員に対して(男性が、女性を見下して何かを説明する)マンスプレイニング的な行為や、かわいがる一方で気に食わないことがあると抑えつけようとする背景には、『政治領域は男のもの』と思っている男性が多いことがあります。自分のスペースを侵害されることへの反動でハラスメントという手段を使って排除しようとします。中でもセクシュアルハラスメントは、女性議員を単に性的な存在として扱い、大きなダメージを与えます」

 女性議員へのセクハラやパワハラは、これらの言葉が一般的になる以前からあったことだが、被害が深刻化している理由について元市川市議で地方議員に詳しい高橋亮平さん(42)は「地方議員が身近な存在になったことも影響している」とみる。

次のページ