●激しい「票ハラ」受けても、「有権者むげにできず」

 有権者からのハラスメント被害に悩む女性の地方議員が少なくない。17年度に内閣府男女共同参画局が実施した全国の女性地方議員への調査では、「女性として差別されたりハラスメントを受けたりすることがある」と回答した人は29.6%だった。経験が浅い議員も多い20~40代では4割に上る。投票を頼むとキスを迫られたり、支援者からチークダンスを強要されたり。個人的な誘いを断ると「ネットで悪く書く」と脅された人もいる。投票や支持の「見返り」かのように、有権者が議員に行うハラスメント。「1票の力」を振りかざす「票ハラ」だ。

 東京都台東区議の本目さよさん(36)は、初当選から数カ月後、区内に住む男性から自宅に洋服が届いた。添えられた手紙は、それを着て写真を撮り、送るよう要求する内容だった。達筆の手紙とその内容があまりにミスマッチで、最初は自分が読み違えているのかとさえ思った。

 送り主の男性とは、その少し前に支援者からの紹介で挨拶を交わしていた。

「目を疑いましたし、とても怖かった。でも(その男性を)紹介してくださった支援者もいるし、むげにはできない。丁寧に送り返しました」

 当時は8戸ほどの小さな賃貸マンションで一人暮らし。区議会ホームページの議員紹介欄では自宅の住所や電話番号を公表していた。自宅の前で待ち伏せされたり、郵便物が送りつけられたりして身の危険を感じることが何度もあり、「自宅を公表するのは怖い」と議会に相談。話し合いの末、連絡先の公表は事務所だけとなった。

「性別にかかわりなく誰もがやりたいことをできる社会」を目指して区議になった。自ら提案した病児保育が実現するなど政治家としてやりがいを感じる一方で、女性ゆえの制約もある。議員にとって区民に会って話を聞くことも大切な仕事だが、相手が男性の場合は区役所のロビーや喫茶店にするなど、場所や時間を選ぶ。

 ジェンダーギャップ(男女格差)の大きさを国別に順位づけした世界経済フォーラムの18年の報告書では、日本は149カ国中110位。G7では最下位だった。中でも男女格差が大きいのは政治分野で125位。女性議員の比率は徐々に上がっているものの、依然として低い水準だ(グラフ参照)。女性議員が一人もいないという地方議会も約2割ある。

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