紘のような愛情表現、田舎の人ならではの武骨な男の優しさが求められた役は、色々な意味で初めてでした。

 10代から数々の映画に出演してきた稲垣だが、阪本監督のような「男っぽい」現場も初めての経験だった。

「阪本組」というと「半世界」の世界ではないけれど、骨太なイメージがあります。今回、自分にもそういう面がなくもないのかもと気づきました(笑)。「阪本組」はみんなが職人気質というか、監督がトップだとか、撮影している時はカメラマンが一番えらいとか、そういう感覚がないんですよ。各々が役回りで、スタッフが互いに尊重し合う。持ち道具さんもカメラマンさんも照明さんもメイクさんもみんな同じです。もちろん阪本組でも監督が圧倒的な存在だとは思いますが、スタッフ一人一人がそれぞれ本当の職人としてプロ意識を持っている。撮影ではそれを間近に感じました。すごく面白い1カ月間でしたね。

(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2019年2月4日号より抜粋