AERA 2019年2月4日号の表紙に登場した稲垣吾郎さん
AERA 2019年2月4日号の表紙に登場した稲垣吾郎さん

「新しい地図」の一員として新しいスタートを切った稲垣吾郎。ソロになって1発目となる主演映画「半世界」では、スナックで焼酎を飲むシーンすら難しかったと語る。過去にない役を演じる中で、何を感じたのか?

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 気づけば40歳目前。人生折り返し地点に到達した男たちは残りの人生をどう生きるのか──。映画「半世界」(阪本順治監督)は、稲垣吾郎(45)、長谷川博己(41)、渋川清彦(44)演ずる同級生3人の友情を軸に、人生に迷える男たちの姿を描く。稲垣演じる高村紘は、父から受け継いだ山中の炭焼き窯で一人黙々と備長炭を焼く炭焼き職人。そこにはこれまでのオシャレなイメージで鳴らしてきた稲垣の姿はない。

「新しい地図」の一員として改めて芸能活動をスタートしたのが2017年11月。この映画の話を聞いたのがちょうどこの頃でした。

 最初にオファーをいただいた時はびっくりしましたね。今まで出演してきた作品とは違った作品であり、違った役柄でしたから。

 でも新しいスタートを切る、役者としての1発目の作品としては、今までやったことのない役柄はピッタリで、またとない良い機会でした。この映画は今の年代になってようやく演じられる役柄でありストーリーです。映画を見た男性はみんな共感してくれるんですよ(笑)。40代になると、この話は見る方にしみじみと受け取ってもらえるのかなという思いがありました。

 紘は炭焼き職人とはいえ、炭焼きの仕事に情熱を傾けるわけでもなく、家庭のことは妻(池脇千鶴)に任せっきり。妻と向き合って話すこともなく、反抗期の息子に対しても無関心。だから息子がいじめを受けていることにも気がつかない。惰性で生きているような紘は、日本の家庭にいがちな“残念なオヤジ”のように見える。

 僕も44歳(撮影時)になって、カッコいいヒーローのようなキャラクターではなく、こういう作品もできるようになったのかなと思います。これまではバッジを付けた役や天才的な役、ちょっと変人な役などが多かったので。紘はホントに市井の人。みなさんにとっても新鮮だと思います(笑)。自分にとっては、この映画は大きなチャンスであり、これからの俳優としての道を作ってくれた作品だと思っています。

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