アフリカで納豆を勧める宮下裕任さん(撮影/高橋有紀)
アフリカで納豆を勧める宮下裕任さん(撮影/高橋有紀)
左上から2枚目は宮下さん提供、残りは撮影/高橋有紀
左上から2枚目は宮下さん提供、残りは撮影/高橋有紀
左下から2枚目と一番下は宮下さん提供、残りは撮影/高橋有紀
左下から2枚目と一番下は宮下さん提供、残りは撮影/高橋有紀

 水戸出身の男性が、納豆をアフリカに根付かせようと奮闘している。在留邦人だけではなく、現地の人にも食べてもらうには。試行錯誤の末に、納豆の新しい可能性が見えてきた。

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 都内のマンションの一室。宮下裕任(34)とコートジボワール出身のサコ・ランシネ(36)は、皿から手に取ったものを口に入れると、顔を見合わせてにやりと笑った。

「これはいける!」

 2人が口にしたものの正体は、乾燥させ、砂糖で味付けした「シュガーローストドライ納豆」だ。

 日本の食卓に欠かせない、ごはんのお供。あの納豆が、なぜこんな形に行き着いたのか。

 宮下は水戸市出身。茨城大学大学院修了後、NTTの関連会社で働く傍ら、何かおもしろいことをやりたいと同郷の仲間と始めたのが「納豆男子」プロジェクトだった。納豆に合うトッピングをネットで発信する活動が茨城県内で注目されるように。納豆好きなサコと仕事で出会い、メンバーに入ってもらったところで、一つの夢が見えてきた。

 アフリカに納豆を広めたい──。

「世界の食卓に納豆を」

 はじめの一歩となったのが2015年7月。タンザニア最大の国際商業祭「サバサバ」に「納豆男子」としてブースを出した。工業製品や農機具を扱う上場企業の参加がほとんど。異例の出展に尽力し、現地まで同行したのがJETRO茨城の所長だった西川壮太郎さんだ。

 納豆の輸出ビジネスの相談に訪れた宮下との出会いを西川さんが振り返る。

「はじめは、納豆ならアジアやアメリカの市場が伸びているという話をし、現地のバイヤーを紹介したんです。でも、輸出されていないアフリカでやるからこそ意義があるんだと、宮下さんは譲らなかった。その心意気にほれ込んで、応援してみようという気になったんです」

 タンザニア人を相手に1千パックの納豆をふるまいPRした。食に保守的ではあるものの、健康食品には注目していて、日本人の寿命が長いことにも興味を持ってくれる。うまくアピールすれば勝機がある、と2人は確信した。

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