大災害ともなれば、被災者は食べるものはおろか、衣服の確保もままならない。働き口を奪われることも少なくないが、自宅の修繕費用に、日々の生活費と出費は重なる。ドローンを活用して早期に保険金が支払われれば、生活再建がスムーズになることは間違いない。

 そのため、損保ジャパンのドローンは18年の西日本豪雨や北海道胆振東部地震でもフル稼働。広島では県の要請を受けて土砂崩れで不通になったエリアの調査を担当。北海道では家屋の損害調査のみならず、最大震度7を記録した厚真町の厚真ダムの調査にも当たった。地震でダムの底に土砂が溜まり、決壊を懸念する声があがっていたため、ドローンを活用して点検作業が行われたのだ。2次災害のリスクもある危険な場所で、ドローンは着実に成果を上げてきた。

「本来であれば、被災地でドローンが“活躍しない”にこしたことはない。ドローンが出動するということは、それだけ大きな被害がもたらされ、人が足を踏み入れにくいということです。被害を防いだり、小さくしたりするためのドローンの活用法も研究しているところです」

 17年12月には東京・新宿の超高層ビル街にドローンの姿があった。新宿区などとタッグを組んで、災害時の状況把握や帰宅困難者の誘導にドローンを活用するための実証実験が行われたのだ。

 東日本大震災時に新宿区は職員を各地に派遣したものの、通信状況の悪化などにより情報共有が進まず、効率的な避難誘導ができなかったという。そのため、ドローンを飛ばして各地の被害状況を把握し、ドローンに搭載したスピーカーで被災者の避難誘導も行う実験が進められているのだ。

 人の目となり口となり、手足にもなってドローンが災害時に活躍する日は近い。(ジャーナリスト・田茂井治)

※AERA Mook『災害からお金を守る』より