「ドローンを出動してくれないか?」

 地震での活動が知れ渡った影響から、16年末には高橋さんのもとには、こんな要請も入るようになった。同年12月22日に発生した糸魚川市の大規模火災の現場調査の要請だ。市街地の広範囲に延焼し、計147棟が焼損。損保ジャパンの保険に加入する100棟あまりの被災状況を把握する必要もあったため、高橋氏は鎮火直後の現場にドローンとともに入った。

「自宅を失った加入者の不安を我々が解消することはできません。しかし、ドローンを活用して被災状況をいち早く確認できれば、早期の保険金の支払いが可能なると考えました」(高橋さん)

 通常の火災現場であれば、調査員が現地に足を運ぶだけで事足りる。だが、糸魚川市駅北大火ではあまりにも広範囲に延焼し、建物の大半が焼失していた。早期に被災状況を確認するにはドローンがうってつけだった。

「屋根だけに飛び火して損傷したケースなど、地上からは把握できない被害もドローンを使ってすぐに確認することができました。ヘリコプターでも同じことができますが、ドローンならばより低い高度で建物に接近して撮影することが可能です。その映像をもとに被災地の状況を三次元モデリングし、Googleマップの被災前の画像と比較することで、瞬時に詳細な被害を把握することに成功したのです」(同)

 その結果、損保ジャパンは最短のケースでは2日間で被害査定を終えて保険金の支払いを済ませたのだ。

 17年の九州北部豪雨でもドローンの能力はいかんなく発揮された。被害発生から約1週間後に、高橋さんは甚大な被害を出した福岡県朝倉市へ。現場は豪雨で流された家屋や流木が行く手を阻み、土砂でぬかるむ通りが人の進入を拒んでいた。

 立ち入り制限がかけられ、被災者も自分の住居の被害状況が把握できないなか、ドローン1機だけが被災地の奥へ奥へと分け入った。

「最も被害が深刻だった地区だと、立ち入り制限が解除されるまでに3カ月を要しましたが、我々はドローンを飛ばして2日間で被害の査定を終え、その日に保険金の支払いができたものもありました」(同)

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ドローンを活用して早期に保険金を…