「問題を解くのに必要な知識は同じなのに、たどり着くまでに時間を費やす構造になっている。まどろっこしい感じがしました」

 前出の下松さんは言う。

「理系の生徒でも読解力が必要だし、文系の生徒でもグラフや表を読み解く力を養ってほしい。問題からそんなメッセージが読み取れます」

 センター試験ではマークシート式で選択肢を選ぶ問題のみだったが、国語、数学Iで記述式問題が導入されることも注目を集めている。

 国語では、20~30字程度、40~50字程度、80~120字程度を記述する問題が各1問出題される。記述式導入に伴い解答時間は、現行のセンター試験の80分から100分に延長される。

 数学Iでは、大学入試センターの資料によると「数式を記述する問題、または問題解決のための方略等を端的な短い文で記述する問題」が3問出題予定。

 英語はこれまでリスニング50点、筆記200点という配点だったが、共通テストでは100点ずつに。リスニング力がより重視されることになった。

 試験名はこれまで単に「筆記」だったものが、「筆記(リーディング)」と明記される。間接的にスピーキングやライティングの力を測っていた発音・アクセント・語句並べ替えの問題もなくなり、読解に特化した試験になった。スピーキングとライティングに関しては民間試験で測る前提だが、この利用については大学によって方針が異なり、いまだ議論が揺れている。

 今回紹介した英国数以外の科目では、世界史でも特徴的な変化が見られた。

「グラフから時期を読み取り、関連する出来事を思い浮かべ、それに関連する国を地図から選ぶという、複合的な問題がありました。解答にたどり着くまでに何段階かステップが必要です」(下松さん)

 埼玉県の公立高校の社会科教諭、武井寛太さん(27)は言う。

「用語の暗記ではなく、概念の理解が問われる試験。平易な知識を丁寧に学習した生徒ほど得点できていたようです。ここにマーカーを引きなさいではなく、生徒が自らの言葉で咀嚼して理解を深められるような活動が、授業でも必要になるでしょう」

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