ところでこの映画、なぜ劇場公開ではなく、Netflix配信なのか。

 実は、コロンバスが本作を手がけた理由がもう一つあった。

「初期に監督した『ホーム・アローン』や『ハリー・ポッターと賢者の石』のような雰囲気を持つ映画を作ること」(コロンバス)だ。だが、ハリウッドのスタジオでこの企画は通らなかったという。

「ハリウッドは今やコミックやゲームを原作にした映画ばかり。オリジナリティーは失われた。私はそんなシステムにすごくフラストレーションを覚えていたんです。今回映画作りのチャンスを与えてくれたのは、Netflixだけでした」

 コロンバスがストリーミング系の会社と組んだのは初めてだが、「Netflixはアーティストとしての自由を与えてくれた。制約がなく常にサポートしてくれる。今までで一番いい経験をしました」。

 Netflixは1997年に創業。2018年10月現在の有料会員数は1億3千万人、世界190カ国で配信されるなど急成長。最近ではアルフォンソ・キュアロンやコーエン兄弟などの作品を配信、今後もマーティン・スコセッシ、スティーブン・ソダーバーグなど、著名監督の作品が続々配信されていく予定だ。

「映画の将来は、Netflixが握っている」

 そんなコロンバスの言葉が説得力を持って響く。(文中敬称略)(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2018年12月31日号-2019年1月7日合併号