サポートプログラムでは、まず性格行動特性の診断テストと90分間のコーチングを行う。起業家に自分の特性やストレス許容度を客観的に理解してもらうためだ。その後はチャットでコーチが相談に応じ、起業家自身や従業員にメンタルの問題が生じた場合、臨床心理士や精神科医など専門家を紹介。先輩起業家や仲間と気軽に話せるオンラインコミュニティーも提供する。

「メンタルの問題は起こってしまってからでは『助けて』が言えない。そうなる前に弱さをさらけ出せる場所、いざという時に駆け込める先を作っておこうと考えました」(櫻本さん)

 注目すべきは、国内の主要なベンチャーキャピタル(VC)20社が賛同し、9社が資金も提供している点だ。そのため起業家側は1年間、基本料金は無料。連続起業家の家入一真さん(39)は、VCとして資金提供し、プログラムの開発にも関わった。家入さんが関心を持ったきっかけは、後輩起業家の自殺だ。周囲には成功していると思われていた彼は、死の3日前に会った時も元気そうに見えた。

「あの時、なぜ気づいてあげられなかったのかと悔しくて。僕自身は起業で救われたし、今では起業を促進しようと投資もしている。でも投資家が『メンタルが弱い奴には投資しないし、つまずいたら自己責任』と切り捨ててしまうのなら、あまりにも無責任。そんな社会では、誰も起業しなくなる」(家入さん)

 著名なVCである500 Startups Japanもサポーターだ。マネージングパートナーの澤山陽平さんによれば、起業家のメンタルは世界的課題。特に東南アジアの起業家は自責傾向が強いとわかってきた。

「資金以外でもサポートする方法を探していました。起業家が利害関係のない人に相談できる場はとても大事」(澤山さん)

 cotreeでは毎月約40人にサービスを提供する予定。すでに18年12月分について約300人から応募があった。ニーズは高い。(編集部・石臥薫子)

AERA 2018年12月31日号-2019年1月7日合併号