「もう(体力を)使い切るつもりでスケーティング、スピン、ジャンプ、全てに手を抜くところなく、思い切りやろうという気持ちで滑りました。頭から落ちてもいいから、絶対に回ってやるぞという強い気持ちが、アクセルだけじゃなくて、トーループ、サルコー、フリップにも表れていたかなと思います」

 前日の悔しさを思いっきりぶつけた。結果は逆転でのスケートカナダ2連覇。自身GPシリーズ4勝目を挙げた。しかし、優勝しても、宇野から「うれしい」という言葉は聞かれなかった。今季は特に結果を気にしなくなったという。

 今季からルール改正があり、フリーの演技時間は4分半から4分に変更された。「演技中に休む時間がなくなった」という選手が多く、「体力的に厳しくなった」という声が聞こえてくる。宇野はこう言う。

「いや、ルールが変わっても、特に何も変わらないと思います。体力には自信があるので」

 それなのに、フリーで体力がもたずにジャンプの失敗をした。

「全力でやった時に、最後まで滑りきる体力がなかったという結果。もっと体力が必要。追い込んで練習していきたいなということを自覚できたのが収穫」

 いつもは冷静な宇野がSPが終わってからは、気持ちを前面に出し、熱くなっているように見えた。ただ、本人はこう語る。

「僕は元々冷静でもないですし、すごく負けず嫌いです。その時に思った気持ちをもう隠さずに出そうと思っているので。SPが悔しかった。だから、フリーで気合を入れてやったという感じでした」

 では、これからは常に気持ちを出していくのか。

「その時に自分がやりたいって思ったことをやればいいかなって思っています。それこそ、集中できない試合も今後はあると思うんですよ。じゃあ、練習通りにやろうって捉えるのもいいことだと思う。次の試合はどうなってるか分からないですけど、その時の気持ちを尊重したいなと思っています」

 宇野らしく、4年後の北京五輪に向けて歩み出した。

(朝日新聞スポーツ部・大西史恭) 

※AERA 2018年11月12日号