公共交通の計画策定などの実績豊富なバイタルリードに就職した遠藤さん。週末は広島県内でのレジャーや中四国地方へのドライブを楽しむ(撮影/編集部・澤田晃宏)
公共交通の計画策定などの実績豊富なバイタルリードに就職した遠藤さん。週末は広島県内でのレジャーや中四国地方へのドライブを楽しむ(撮影/編集部・澤田晃宏)
マリホ水族館の広報を担当する武田さん。地元メディアとの打ち合わせも担当し、自分が関わったCMなどで来客があるとやりがいを感じる(撮影/編集部・澤田晃宏)
マリホ水族館の広報を担当する武田さん。地元メディアとの打ち合わせも担当し、自分が関わったCMなどで来客があるとやりがいを感じる(撮影/編集部・澤田晃宏)

 地方に仕事がない、は思い込みだ。取材で出会った人たちは固定観念を取っ払い、意外な仕事や働き方を見つけて、軽やかに人生を楽しんでいた。

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 遠藤寛之さん(29)はキャリア官僚を辞めて、今年4月に広島へ移住した。入省後に出向した広島で出会った妻と、東京では遠距離恋愛だった。2週間に一度は始発の新幹線に乗って週末を広島で過ごしたが、「近くにいたい」と移住を考え始めた。

「自分自身は東京出身で彼女を東京に呼ぶという考えもありましたが、将来的な子育て環境を考えると広島がいいと思った」

 しかし──問題は仕事だ。家族のためなら霞が関を去ることに迷いはなかったが、自分のキャリアを活かせる仕事はあるのか。東京で稼いでいた給与もキープしたい。足を運んだ転職フェアで出会ったのが、自治体としてブースを出していた広島県だった。最終的には知人に紹介された公共交通系のコンサルタント会社への転職を決めたが、県に紹介された企業の面接も受けた。道路計画などのコンサルの仕事で、自分のキャリアも活かせそうだった。東京と変わらない給与も提示された。

「自分がかかわる土木系の技術は、東京も地方も変わらない。地方に高度な仕事がないわけではないですし、地方である分、よりお客様と密接な関係で仕事ができます」

 遠藤さんの職場は広島市街地から少し離れたベッドタウンにあり、会社の裏側には山や畑が広がっていた。東京生まれの遠藤さんだが、都会の暮らしが恋しくはならないのか。

「広島は中心部に行けば東京並みに栄えていて、逆に電車で1時間も走れば風光明媚な光景が広がる。街がコンパクトにまとまっていて、子育て環境としては東京よりいいと思います」

  野元雄介さん(31)は2016年3月に広島へ移住した。自身は奈良県出身で、同い年の妻は大分県出身。二人とも東京に地縁もなく、子育てを考えると、ずっと東京で暮らして行こうという気持ちはなかった。

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