ただ、地方から東京に出てきている若者にとっては、その逆もあり得る。人生100年時代を迎え、介護離職などのリスクを避けるため、Uターンへの関心は高まっている。福岡県出身の武田直樹さん(26)が移住を決意したキッカケは叔父の死だ。

「両親が近くで叔父を見守っている姿を見て、本来あるべき姿だと思った。出身の福岡の少しでも近くに戻りたかった」

 移住前、武田さんは関東の水族館に勤務していた。今後も水族館で働きたいと、九州のすべての水族館に電話した。採用の空きがなく、インターネットで見つけたのが現在勤める広島市のマリホ水族館だ。ここなら車を飛ばせば何かあっても2時間で実家に帰ることができる。昨年末、広島市内に移り住んだ。

 縁もゆかりもない広島での生活で、気軽に飲みに行ける友達がいないのは唯一の不満だが、

「広島への転勤者の交流会や、街コンも毎日のように行われています。少しずつですが、人間関係も広がっています」

 こうした出会いの機会の多さも大都市、広島移住の魅力だ。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2018年10月8日号より抜粋