●後継教祖巡り代理戦争

 今回、遺骨の引き渡しを求め共同戦線を張った妻と三女は、これまでも共闘と対立を重ねてきた。

「旧アレフの分裂騒動の際、麻原の妻と三女が共同して私を追い出した。そして3年前、今度は妻と三女が教団内で対立して、袂を分かった。結果的に妻は今のアレフを裏から支え、三女はアレフから離れた。ほぼ同時に分派した『山田らの集団』は、アレフより三女の考えに共鳴していると推察されます」(上祐氏)

 二人の対立は、2013年にアレフ内で次男を教団復帰させたかった妻に対して、三女が反対したことに端を発する。三女に賛同した幹部信徒らは次々に処分され、15年には「山田らの集団」という分派が生まれた。後継教祖として次男を推す妻と、長男を擁する三女によって「代理戦争」のような状態が続いていたのだ。

「最初は長男も次男も三女の下にいました。強い性格の三女は弟たちを束ねたかったのだと思います。約15年前、まだアレフにいた私に三女は『今のうちに厳しくしておけば、(長男、次男は)将来的に私に従うよね』と言いました。その後、長男は三女の下に残る一方、次男は何らかの理由で母親の元に移った。これで、教団内のパワーバランスが大きく変わった。次男は麻原が認めた後継候補であり、ダライ・ラマに次ぐ(チベット仏教の序列2位の)パンチェン・ラマの生まれ変わりだとアレフでは信じられていた。その次男を後継教祖にすることを否定した三女は、麻原を否定したと批判されて、アレフの主流派ではいられなくなった」(同)

 最も懸念されるのは、遺骨が信仰強化に利用されることだ。髪の毛や血液から風呂の水まで、オウム真理教時代から松本元死刑囚の体は信者から神聖視されてきた。上祐氏は言う。

「公共の安全から考えれば、理想は四女の代理人が主張する海への散骨だと思います」

(AERA編集部・作田裕史)

AERA 2018年7月23日号