「これより下は危険」というラインはないが、BB+(ダブルビープラス)以下は、ハイリスク・ハイリターンな「投機的格付け」と位置づけられる。プラスやマイナスは、その段階のなかでも強いか弱いかを表す。つまりBB+はBBよりもやや強いが、その上のBBBよりも弱い。

 一方、株に投資する場合は目線が異なる。株投資では株価が上がることを期待する。つまり、企業の成長性がモノサシとして重要になるが、成長にはリスクがつきもの。ハイリターンな企業ほどハイリスクと評価されがちで、格付けは高くなりにくいという。

 では、その格付けはどこに着目して決められるのか。吉澤さんによると、銀行の場合は大きく分けて二つある。

「ひとつは銀行自身のお金を返す能力です。これは主に、銀行がどんな手段でどのくらい儲けているかという『収益力』と、赤字に陥った場合の最後の砦(とりで)である『自己資本』で判断します」

 収益力では、銀行本来の業務である貸し出しで安定的な利益を得ている場合に高く評価されるという。自己資本とは、銀行が持つお金のうち、返済する必要がない分を指す。借金ではない「自己」のお金だ。

 着目点のふたつ目が、政府の支援をどれだけ期待できるか。

「日本では、銀行が苦しくなった場合に公的資金を注入したり、一時国有化したりすることができると、預金保険法という法律で定められています。こうした支援がどの程度織り込めるかも、大切な判断基準です」

 S&Pは2015年にみずほ銀行と三井住友銀行の格付けを引き下げた。これは日本国債の格付けを引き下げたことに伴って、日本政府のサポート力が弱くなったと判断したことが主な理由だ。このとき、三菱東京UFJ(現・三菱UFJ)銀行の格付けには変更がなかった。

「政府から受けられるサポートの度合いについては、みずほや三井住友と三菱UFJは同じだと考えています。このときは政府サポートを考慮に入れなくても三菱UFJ自体の信用力が十分高いと判断し、格付けを据え置きました」

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