矢部太郎(やべ・たろう)/1977年、東京都生まれ。97年にお笑いコンビ「カラテカ」結成。『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞(撮影/写真部・片山菜緒子)
矢部太郎(やべ・たろう)/1977年、東京都生まれ。97年にお笑いコンビ「カラテカ」結成。『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞(撮影/写真部・片山菜緒子)
手塚るみ子(てづか・るみこ)/1964年、東京都生まれ。手塚プロダクション取締役、プランニングプロデューサー。著書に『定本オサムシに伝えて』など(撮影/写真部・片山菜緒子)
手塚るみ子(てづか・るみこ)/1964年、東京都生まれ。手塚プロダクション取締役、プランニングプロデューサー。著書に『定本オサムシに伝えて』など(撮影/写真部・片山菜緒子)
『大家さんと僕』(新潮社)は、大家さんの家の2階に住む「僕」と大家さんの心温まる交流を描く。現在「週刊新潮」で連載中(撮影/写真部・片山菜緒子)
『大家さんと僕』(新潮社)は、大家さんの家の2階に住む「僕」と大家さんの心温まる交流を描く。現在「週刊新潮」で連載中(撮影/写真部・片山菜緒子)
手塚治虫文化賞の正賞は鉄腕アトムのブロンズ像(横山宏氏作)。今年のマンガ大賞は野田サトルさんの『ゴールデンカムイ』が受賞した(撮影/写真部・片山菜緒子)
手塚治虫文化賞の正賞は鉄腕アトムのブロンズ像(横山宏氏作)。今年のマンガ大賞は野田サトルさんの『ゴールデンカムイ』が受賞した(撮影/写真部・片山菜緒子)

 初めて描いた漫画『大家さんと僕』で見事、第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞したお笑い芸人の矢部太郎さん。手塚治虫さんの長女・るみ子さんと贈呈式の記念イベントで語り合った。

【『大家さんと僕』のイラストなどの画像はこちら】

*  *  *

手塚るみ子(以下、手塚):このたびは手塚治虫文化賞短編賞受賞、おめでとうございます。受賞のスピーチでは感極まった感じでいらっしゃいましたね。

矢部太郎(以下、矢部):緊張しました。一人であんなにしゃべったのは初めてです。あれだけの尺を僕にくれる番組はないので。

手塚:一読者として拝読しましたが、本当に素晴らしい作品でした。嬉しくて泣けてしまう、心が温かくなりすぎて泣けてしまう。矢部さんの作品もそうですが、手塚治虫文化賞は、私が日常で読んでいて素晴らしい力作だなと思う作品が受賞してくださるので、いつもこの贈呈式が嬉しいんです。

矢部:僕も受賞をきっかけに作品を知って読ませていただくこともあります。今までの受賞作もかなり読んでいます。

手塚:矢部さんの『大家さんと僕』は、うちの手塚が嫉妬するような作品だと思います。デビュー作、『マアチャンの日記帳』の雰囲気が甦る感じがあって、手塚の原点に戻るような作品が賞を取られたなと思いました。手塚も懐かしい気持ちになりつつ、「俺にも描けるよ」などと言って、まず大家さんを探すところから入るかもしれません(笑)。トキワ荘には大家さんがいたんでしょうか。

矢部:トキワ荘の大家さんの話、読みたいです!

手塚:大家さんのキャラクターが魅力的で、矢部さんとのやりとりも面白いのですが、表現力が素晴らしいと思いました。風の強い日に、大家さんの髪がゴムのように伸びる表現がありますね。

矢部:大家さんはすごく風を受けるんです。僕も風で飛ばされそうになることがあって。テレビ番組でも、何回か風で飛ぶという企画をやったことがあります。あの表現は僕が小さい頃読んでいた手塚先生の名著、『マンガの描き方』の影響で描いたと思います。

手塚:そういえば手塚のファンクラブに入っておられたんですよね。

矢部:そうなんです。受賞を知らせたら父が当時の会員証を送ってきてくれて。この封筒を手にした時も嬉しかったです。

手塚:これが会員証なんですね。

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