矢部太郎×手塚るみ子対談「『大家さんと僕』は手塚治虫が嫉妬するような作品」 (2/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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矢部太郎×手塚るみ子対談「『大家さんと僕』は手塚治虫が嫉妬するような作品」

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矢部太郎(やべ・たろう)/1977年、東京都生まれ。97年にお笑いコンビ「カラテカ」結成。『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞(撮影/写真部・片山菜緒子)

矢部太郎(やべ・たろう)/1977年、東京都生まれ。97年にお笑いコンビ「カラテカ」結成。『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞(撮影/写真部・片山菜緒子)

手塚るみ子(てづか・るみこ)/1964年、東京都生まれ。手塚プロダクション取締役、プランニングプロデューサー。著書に『定本オサムシに伝えて』など(撮影/写真部・片山菜緒子)

手塚るみ子(てづか・るみこ)/1964年、東京都生まれ。手塚プロダクション取締役、プランニングプロデューサー。著書に『定本オサムシに伝えて』など(撮影/写真部・片山菜緒子)

『大家さんと僕』(新潮社)は、大家さんの家の2階に住む「僕」と大家さんの心温まる交流を描く。現在「週刊新潮」で連載中(撮影/写真部・片山菜緒子)

『大家さんと僕』(新潮社)は、大家さんの家の2階に住む「僕」と大家さんの心温まる交流を描く。現在「週刊新潮」で連載中(撮影/写真部・片山菜緒子)

手塚治虫文化賞の正賞は鉄腕アトムのブロンズ像(横山宏氏作)。今年のマンガ大賞は野田サトルさんの『ゴールデンカムイ』が受賞した(撮影/写真部・片山菜緒子)

手塚治虫文化賞の正賞は鉄腕アトムのブロンズ像(横山宏氏作)。今年のマンガ大賞は野田サトルさんの『ゴールデンカムイ』が受賞した(撮影/写真部・片山菜緒子)

矢部:るみ子さんは、入っていないんですか?

手塚:入っていないです。ファンではなくて、家族ですので(笑)。矢部さんが一番最初に読んだ手塚作品は何ですか?

矢部:手塚先生の作品ではないですが、藤子不二雄先生の『まんが道』で、手塚先生のことがすごく魅力的に描かれていますよね。それまでも『ブラック・ジャック』などを読んでいたのですが、あれで僕にも手塚先生のすごさがズドンとわかったんです。手塚先生が漫画に対してどんなことをしたのかということをわかりやすく描いてくださっていて……。『まんが道』は、使徒が教えを広げるといった感じの本ですよね。『地底国の怪人』や『新寶島』などで革新的なことをされていたということに目を開かされた。これが一番最初のインパクトです。

手塚:『まんが道』がきっかけで手塚作品を読もうと思った方は結構いらっしゃって、藤子先生には頭が上がりません。

矢部:印象に残っている作品でいうと、やはり『火の鳥』です。僕の世代の「あるある」だと思うんですが、学校の図書館に唯一おいてある漫画なんです。僕は教室から図書室に逃げ込むところがあったのですが、その時に読んで、俯瞰で物事を見ることができるようになって、今いろいろある悩みなんてどうでもいいやという気持ちになった。AD3000年の時代とかが出てきますからね(笑)。すごく広い視野が開けて、しかもそれが子どもの僕にも全部わかったような気がしたんです。その時、ちょっと大人に近づいた気がしました。わかっていなかったかもしれないですが、でも手塚先生はそういうふうに描いてくださっているんです。

手塚:わかった気になれるというのはいいですよね。それが幼い矢部さんの心に刺さったんですね。先ほど表現力のお話をしましたが、新宿に向かって走っている車の中で、この道路がまっすぐなのは戦時中、滑走路にするためだったのではという話を大家さんから聞いて、その時に乗っている車がふっと浮くシーンがあります。あの表現がとても刺さりました。それまで大家さんとの間にリアルに起こったエピソードを描いていますが、あの瞬間に空を飛ぶという空想の世界になる。ふわっと浮かんだ瞬間に、リアルに実在する大家さんの話からロマンある話になる。ファンタジーを描けるのは、絵本作家でいらっしゃるお父様の影響でしょうか。


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