49歳の独身男性。収入の少ない弟に送金し続けているが…(※イメージ写真)
49歳の独身男性。収入の少ない弟に送金し続けているが…(※イメージ写真)

 NHKの特集で話題となった「アラフォー・クライシス」。“不遇の世代”と呼ばれるアラフォー世代が抱える問題は、まさに現代日本が抱える闇に他ならない……。自立できず、親元から離れられない同世代のきょうだいのことを案じる40代もいるだろう。朝日新書『きょうだいリスク』に登場した49歳男性のケースを紹介し、この問題を考える。

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【ケース】収入の少ない弟に送金し続ける西山さん(仮名)・男性

 埼玉県に住む西山さん(49)は3人きょうだい全員が独身だ。4歳年下の弟とは別々に一人暮らしをしている。男兄弟同士、普段はほとんどコミュニケーションを取らず、お互いに干渉し合わない。

 それでも西山さんは、非正規で週3日働く弟に、「光熱費」という名目で月1万円の仕送りを続け、ボーナスの時期にはさらに上乗せした金額を送ってきた。

 一方、姉(51)は東北地方の実家で暮らしている。父はすでに他界しており、姉と母の2人暮らし。姉はダウン症であり、80代の母が今でも姉の面倒をみている。

「親亡き後、むしろ気がかりなのは、健常な弟の方です」

 と、西山さんは言う。

 姉は障がい者年金をもらいながら福祉団体で働き続けてきた。姉の収入はわずかだが、地元のコミュニティーに根づく暮らしをしている。職場の人からは、姉が仕事を通じて独居の高齢者たちに癒やしを与えているとも聞く。実家は古くなったが、手直しを怠らなければ住まいには困らない。父の遺族年金や、福祉制度、成年後見人制度などを駆使すれば、ある程度は姉の生活費の算段ができる。

 もし母親が介護状態になったとしても、母親は「お前は帰ってこなくていいよ」と西山さんに話している。姉のことで長男に負担をかけるのは忍びないという母心ではないかと西山さんは感じている。

 万が一、母が亡くなった場合にも、姉の暮らしをサポートする手立てはありそうだ。たとえば、公費の援助を受けながらNPOをつくり、母親名義のアパートをグループホームにして、近距離にある実家に住みながらそこでケアを受けられる体制を取るという方法。西山さんは、遠距離にいながらも、母や姉が地元でお世話になっている人たちと相談しながら、さまざまな方策を考えているところだ。

「姉に関しては、お金、食べ物、衣食住など心配しなくていい環境を用意して、できるだけ人生を楽しんでほしいと考えています」

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一方、弟は…