月太陽発電(ルナリング)構想の施設建設には、月にある資源を極力活用し、ロボットが地球からの遠隔操作で24時間稼働する。実現すれば、全人類が平等にエネルギーを利用できる(写真:清水建設提供)
月太陽発電(ルナリング)構想の施設建設には、月にある資源を極力活用し、ロボットが地球からの遠隔操作で24時間稼働する。実現すれば、全人類が平等にエネルギーを利用できる(写真:清水建設提供)
宇宙エレベーター建設構想のケーブル先端の「カウンターウエイト」は重さのバランスをとるためのもの。木星や小惑星への宇宙船を放出する、太陽系連絡ゲートの役割も担う(写真:大林組提供)
宇宙エレベーター建設構想のケーブル先端の「カウンターウエイト」は重さのバランスをとるためのもの。木星や小惑星への宇宙船を放出する、太陽系連絡ゲートの役割も担う(写真:大林組提供)

 近年、日本にも「宇宙ベンチャー」が数多く登場している。一方で非宇宙系企業の宇宙ビジネス参入も近年のトレンドだ。大手ゼネコンで宇宙分野の研究開発実績のある清水建設と大林組の取り組みを紹介する。

【大林組が取り組む「宇宙エレベーター建設構想」】

 清水建設は1987年に宇宙開発室を設置。同年、宇宙関連の情報収集を担う子会社「CSPジャパン」も創設した。宇宙開発室の機能は90年代に入って技術研究所に移管し、これまでに月太陽発電(ルナリング)構想などを提案している。

 ルナリング構想は、月面の赤道上にリングのように太陽電池を敷き詰めて発電。この電力を地球に向けてマイクロ波やレーザー光に変換して伝送する。無限に近いクリーンエネルギーを供給する夢の発電施設だ。

 同社は4月に新設した「フロンティア開発室」に宇宙開発部を設置。技術開発にシフトしていた宇宙部門を、事業創出を図る部署に再編成した。ベンチャーを含む他社との協業も既に推進中。宇宙開発部の金山秀樹部長(56)は、ゼネコンが宇宙ビジネスに参入する利点をこう話す。

「宇宙という極限環境でのインフラ整備にチャレンジすることで、地上にフィードバックできる技術も磨かれます」

 一方、大林組は「宇宙エレベーター建設構想」に取り組む。有志社員が1年がかりで練り上げたアイデアが社内外で評価され、技術実証研究開発チームが2012年に発足した。

 同構想は地球の赤道上に発着場を設置。宇宙から総延長9.6万キロのケーブルでつなぎエレベーターを運行させる。地球上の建築物は自重によって壊れる限界点がある。しかしこの高さになると、ケーブルは地球の自転とともに周回することで強い遠心力がかかる一方、地球からは重力で引っ張られる。このため理論的には実現可能という。高高度から自転とともに回転するスピードで弾みをつけ宇宙へ放出すると、ロケットの推進力で地球の重力を振り切る必要がなくなり、100分の1のコストで人や物資を宇宙へ搬送できるようになる。

 課題はケーブル素材。有力視されるのが、カーボンナノチューブだ。幅5センチ、厚さ1.4ミリのテープ状で引っ張り強度は鉄鋼の約20倍あるが、現状は長さ数センチの生産が限度という。同チームの石川洋二幹事(63)は「当社が後押しして材料メーカーなど幅広い業界の力を結集させ、技術力をブレークスルーしたい」と意気込む。

AERA 2018年4月30日-5月7日合併号