「予備校には3年以上の多浪生も結構いました。最近は理系でもセンター試験対応のために国語の勉強は必須。英語も思考力が試される問題が多くなり、理系科目以外の勉強に時間を割く必要があった。『理系だけ得意』な人はきついと思う。親の世代は、いまだに日東駒専を“滑り止め”の大学だと思っているけど、そんな時代じゃない」

 駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一さんは言う。

「三大都市圏を中心に浪人生の数は回復基調にあり、来年はさらに増えることが予想されます。受験生は国公立も含めた地方の大学に行くメリットをほとんど感じられておらず、しばらく都市圏の私大の志願者数が減る理由がない。大学入試改革が一段落する20年代半ばまでは、私大の難化は続くと思われます」

 私大が「難化」した要因は、志願者数の増加だけではない。16年度から始まった私大の「定員厳格化」も、大きく作用している。

 教育の質の向上などを理由に、文部科学省は私大の入学定員超過に対して、私学助成金(私立大学等経常費補助金)の交付基準を年々厳しくしている。15年度までは収容定員8千人以上の大規模大学は入学定員充足率(入学定員に対する入学者数の割合)を1.2倍までに抑えれば私学助成金が交付されていた。この基準が16年度は1.17倍、17年度は1.14倍、今年度は1.1倍と年々厳しくなっており、基準を超えると助成金は全額カットされる。さらに来年度は1.0倍を超えた人数分が減額される(0.95~1.0倍の場合は、一定の増額措置がある)。

 私学助成金は、私大の収入の約1割を占めるとされ、全額カットとなれば学校経営に大きな影響を与える。大学側は、これまでのように多めに合格を出して入学者を「確保」しておくことはできない。基準値を0.1でも超えないように合格者数を絞らざるを得ない状況が続いている。志願者数は増えているのに、合格者数は絞られる──受験生にとっては「ダブルパンチ」となっているのだ。(編集部・作田裕史)

AERA 2018年4月23日号より抜粋