AERA 2018年3月12日売り表紙に岩田剛典さんが登場
AERA 2018年3月12日売り表紙に岩田剛典さんが登場

「EXILE」「三代目 J Soul Brothers」のメンバーとして活躍しながら、ドラマや映画にも意欲的に出演している岩田剛典。公開中の映画「去年の冬、きみと別れ」では、鬼気迫る演技で役者として新境地を開いた。その舞台裏、そして役者として大切にしたいものとは?

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──愛する人のために、真実を明らかにしようともがく記者の役。これまで演じてきた役柄と一線を画す、鬼気迫る表情に震えました。

 オファーをいただいた時は、正直、「なぜ自分に?」と思いました。世間の皆さんが僕に抱くイメージ、つまり「植物図鑑」で演じた王子様キャラや、「HiGH&LOW」での不良役のイメージとはまったく違ったからです。でも、脚本を読んだらとにかく面白くて。読み終えた瞬間、「この役をきちんと演じられれば、自分の代表作になる」と確信しました。

 映画の単独主演もこれが初めて。だからこそ、撮影や準備に妥協は絶対したくなかった。この作品だけに集中できるよう、仕事のスケジュールを調整して、覚悟をもって撮影に臨みました。

──邦画好きだそうですね。

 邦画の素晴らしさってすごくあるなと思っていて。莫大な制作費をかけた超大作が多いハリウッド映画に対して、予算が限られる邦画では、濃厚に描かれる人間同士の「ドラマ性」が大きな魅力。となると、役者同士の「芝居合戦」が肝になります。僕もこうしたドラマ性の高い作品で、役者として勝負したいという思いが強くありました。人間の表と裏の顔をあぶり出すような、複雑な心情表現のある骨太な作品に出演してみたかったんです。

 今回の記者はまさにそんな役どころ。この作品に出合ったことで、本当の意味で、役者として一歩を踏み出せたという気がしています。現場でも、見える世界が変わったというか。

──どう変わったのでしょう?

「勘」が鍛えられましたね。瀧本智行監督は「こういう絵を撮りたい」「こういう感情を切り取りたい」という狙いがはっきりしていたので、それを実現するために現場では、どういう声や表情、身ぶりをすればいいか、考えて表現していました。勘が悪いと、「表情はいいけど声のトーンは違うでしょ」とか、「前のシーンでこういう気持ちだったんだから、今はもっと失望している目のはず」とか、ちぐはぐになってしまう。

──確かに、いろいろな伏線がありました。

 どう演じるかを考えるのは役者の仕事でもありますが、今回は瀧本監督が細かくディレクションしてくださいました。僕が演じる記者の目線で話が進んでいくことに加えて、物語の仕掛けがあちこちにめぐらされていて、自分の表情や目線ひとつでその後の展開を左右してしまう恐れがあった。だからこそ、このシーンにはどんなナレーションが入るのか、全体の仕掛けのなかで今の演技がどういう意味を持つのか、ということを常に考えながら、監督の思いを正確に感じ取る勘を磨き続けた現場でした。

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