「これだけやっても、まだOKが出ないのか!」と悔しくなる時もありましたが、とことん向き合っている感じが気持ち良くて、僕は現場が好きでした。

──あえて寝ないで挑んだシーンもあったそうですね。

 クライマックスのシーンは監督に「まさか今日は寝ないよね?」と脅されて(笑)、徹夜で臨みました。繊細な芝居が求められるシーンで中途半端なことをしたくなかったので、自分としても望むところでした(笑)。

 この作品のキーワードは「罠(わな)」です。僕が演じた記者は、真実を追って猟奇殺人事件の容疑者である天才カメラマンに近づいていくうちに、恋人を危険にさらす罠にハマっていきます。それぞれの思惑と罠が交錯するなかを、ヒリヒリしながら生きる「非日常の役どころ」を演じ続けるのは、やりがいはありましたけど、しんどかったですね。

 監督が求める演技のレベルはすごく高かった。絶対応えたかったから、それが確実にできるベストな状態をキープするために、撮影中はお酒も飲まず、友達にも会わず、ある意味とても健康的に過ごしました(笑)。

──彼は愛する人のために行動し続けるわけですが、岩田さんにも、全力で守りたいもの、大切にしたいものがありますか。

 彼には共感できる部分もそうではない部分もありますが、今の僕が一番愛情を注げる対象という意味でいうと、やっぱりグループやメンバーですね。自分の原点ですから。役者として成長したいという夢は個人的に持ちつつも、グループの力になりたいという思いで役者業をやっているところもあります。

 個性を表現するためにそれぞれ違う方法を持ったメンバーが集まっているグループは強いし、どこを切っても異なる表現のかたちが実現できる。僕の「芝居」という自己表現が行きつく先は、結局グループへの恩返しだったりするんですよね。

 その意味で、僕が愛情と情熱を注いでいるのは間違いなく仕事です。僕が「人生一度きりだから」と覚悟を決めて芸能界に飛び込んだ時、役者をやることになるなんて思いもしませんでした。とにかくダンスを一生懸命やって、HIROさんに認めてもらいたい。そればかり考えていましたから。役者という仕事はシンプルに、自分がここで輝き続けていくために模索しながら探し当てたものなんです。

(ライター・まつざきみわこ)

AERA 2018年3月19日号より抜粋