これは最長の40年間をきっちり納めた場合の1人当たりの金額で、厚労省が発表した国民年金の平均年金月額は5万1329円(16年度・基礎年金のみ受給)にすぎない。夫婦2人合わせても10万円程度とは、いくらなんでも少なすぎる──。

「逆に厚生年金受給者の平均年金月額は14万7927円(平成28年度)で、専業主婦など国民年金第3号被保険者である配偶者の年金5万5464(同)円を合わせると、約20万円の平均年金月額を受給できています。

 高齢無職世帯にとって唯一の収入である年金をいくらもらえるかは、会社員か自営業者か、独身か夫婦共働きか夫+専業主婦世帯かで大きく変わります。老後の資金設計を考えるうえで、自分がいったい年金をいくらもらえるか、正確に知っておくことも大変重要です」(西原さん)

■自分の年金額を知る

 国民年金や厚生年金の加入状況は、日本年金機構から毎年「ねんきん定期便」という形で通知が届く。ねんきん定期便には、自分の年金加入期間や加入実績に応じた老齢年金の見込み額、これまであなたが納付した年金保険料の金額が記載されている。

「インターネット上には『ねんきんネット』も開設され、基礎年金番号とメールアドレスを送信して登録すれば、自分の年金見込み額をいつでも見ることができるので、ぜひ活用したいところです。

 また、滞納した年金保険料については、年金事業運営改善法により18年9月までは過去5年分をさかのぼって後納できる制度もあります。滞納している人はぜひ後納して、将来の年金受取額を増やす対策を講じたほうがいいでしょう」

 自分が受け取れる年金と高齢無職世帯の平均的な支出額がわかれば、100歳まで生き永らえた場合、「いくら足りなくなるのか」がすぐ計算できる。

 まずは「ねんきんネット」に登録をして、手軽に自分の年金額をチェックできるようにしておこう。明確な不足金額を目にすれば、資産運用のやる気もアップするというものである。

 一口に「老後」と言っても、その期間は驚くほど長い。「長生きして本当によかった」とつくづく思えるような人生を送るためには、やはり生活費に困ってから右往左往するのでは圧倒的に遅い。

「100年人生」を見据え、快適で何不自由ない老後を楽しむための資産形成をなるべく早い段階から始めることが非常に大切な時代が来ている──。(経済ジャーナリスト・安住拓哉)

※AERA増刊『老後資金が1000万円貯まる! つみたてNISAとiDeco入門』より

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安住拓哉

安住拓哉

出版社勤務を経て2021年に独立。経済関連記事全般が得意。取材・執筆歴20年以上。雑誌の取材記事の他、単行本のライティングも数多く手掛ける。

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