4コマ漫画だけを読んでも楽しめるが、あくまで漫符が主役なのだ。

 百聞は一見に如かず──ここで紹介した3作品のように、4コマの右側には、絵文字でおなじみの「水滴」や「怒り」などのマークと、その説明が書いてある。

「漫符は漫画を描く側からすると、使うと端的に状況が伝わるので、便利なものです。だから漫画を描き始めたころから、使い方は意識していましたね。

 たとえば涙を一粒描くなら悲しみの表現だけれど、泣いている場面にたくさん描くと、かえってコミカルになる、とか。そうした漫符は、実際の様子を表している象形文字的なものだけれど、同時に誇張表現でもあると気づきました」

 他にも怒っている様子を表す「湯気」の漫符は、描き方によってはため息にもなり、勢いよく蒸気が出ている状態にもなる。複数の意味がある漫符は、それぞれの表現に合うように漫画のなかで使い分けられている。

「これまでも漫画研究者が漫符を解説したものはあります。けれど漫画家は書いてこなかった。研究者が取り上げるときは、いろいろな漫画家の表現を集めるから絵もバラバラです。物語の流れに沿って、一貫性のある絵で漫符が出てくる様子を説明することが必要だと思いました」

 横で解説された漫符について知ってから4コマを読むと、作品に込められた二重三重の意味が見えてきて、漫符の奥深さがよくわかる。

「連載中に自分の好きな漫符とあまり使わない漫符があるのに気づきました。私が使わないのはカラスやトンボかな。目が白くなるのも、使いませんねえ。新しい発見として、先日『映画キラキラ☆プリキュアアラモード』を観ていたら、お菓子を作っている場面で、無心に作業をしているときに目が白くなっていた。これは白目の新しい表現だな、と思いました(笑)」

(ライター・矢内裕子)

AERA 2018年2月19日号より抜粋