14年度から始めたのが「子育て支援住宅」の建設だ。年5棟ずつ3年間、計15棟こしらえた。3LDKの平屋一戸建て、家賃の基準額は月5万6千円。周辺の自治体より2割近く安い。

 主なターゲットを隣接する苫小牧市に住む子育て世代に絞った。町から苫小牧まで車で約30分。安い家賃と子育て環境があれば、移住してくれる。思惑通り、15戸に62人の入居が実現した。すべて20代から40代の現役世代だ。

「失敗? あまり考えませんでした(笑)。それよりも、うまくいったらいいなあという、わくわく感のほうが圧倒的に大きかったですね」

 町は、若手職員を中心に地域資源を生かしたローカルベンチャー支援などにも乗り出した。

 厚真をもっと魅力的な町にしたい──。強い意志と希望を持った職員が増えているという。

「これからは若手に任せ、私はバックアップに回ります」

 と話す大坪さんには、夢がある。古い建物を生かした地方創生だ。

「町には築100年以上の古民家が15棟近く残っています。この古民家を活用し、北海道にはまだほとんどない民泊や、民宿を広め、古民家の保存と交流人口を増やしたいんです」

 定年まであと2年。最後まで駆け抜ける覚悟だ。(編集部・野村昌二、柳堀栄子)

AERA 2018年2月19日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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