松岡:アドリブもしないですし、笑いも狙わないつもりです。料理がすでにおいしいのに、さらに調味料を足すようなことになりかねないから。

獅童:そう。台本に書かれていることをきっちりやるだけ。三谷さんの言う通り、素直に演じたいなと思います。
松岡:うまくいったら俺たちのおかげ。失敗したら三谷さんのせいだから!(笑) そう考えないとやってられないでしょ。

獅童:笑いを生み出すって、本当にすごいことだなと、特に病気をしてから心底思うようになりました。医者にも「笑うことが大事ですよ」って言われたし。だから、人を笑わせ続けてる芸人さんって国の宝だと思うんですよ。喜劇って気軽に適当に演じられると思っている人が多いかもしれませんが、実は笑いほど厳しいものはありません。喜劇はある種、怖いんですよ。

松岡:泣かせるのはある意味簡単だけど、笑わせるのって本当に難しいですよね。

獅童:大人って普段笑わないもんね。特に日本人は。カメラマンに笑えって言われても、面白くないとなかなか笑えないよ。

松岡:俺もそう。笑いたくないのに笑顔作るのが嫌だったので、「笑わないキャラ」を浸透させたんですよ。それで、笑わなくてもよくなりました。

獅童:若い頃は、周りは全員敵だと思ってた。でもいまは、こうして同世代の人と一緒にものを作れることが本当にうれしい。自分なりに突っ走ってきて、40代になって、余計な気持ちはそぎ落とされて、素直に好きな舞台に立てる喜びを感じますね。40代にしか見えない景色がある。これからも、「いま」が一番楽しいと思えるように頑張っていきたい。病気で心配させてしまったみなさんに、この舞台で思い切り笑ってもらえたら。

松岡:舞台に立つのは生身の人間だから、初日が開いてから生まれるものもあるし、間合いも微妙に変化します。そんな舞台を自分も毎回楽しみたいです。

(構成/ライター・まつざきみわこ)

AERA 2018年2月12日号