小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
ハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏からのセクハラ被害報道がうねりのきっかけだった (c)朝日新聞社
タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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日本でも広がりを見せ始めた#MeTooキャンペーン。セクハラ体験を綴り、#MeTooへの共感を述べる人が大勢いる一方で、批判する人もいます。こんなのただの悪口大会で、売名行為じゃないかと。
いいえ、そうではありません。#MeTooは暴力へのNOです。ひどい目にあっても泣き寝入りするしかない社会に、あなたはYESと言うのか、NOと言うのか。批判する人は、その問いかけから、目をそらしたいのかもしれません。
今回のキャンペーンを知って初めて、自分はハラスメントに加担したのかもしれないとか、自分も被害者だと気づいた人がいるでしょう。もしも自分は加害者かもしれないと後ろめたさを感じたなら、沈黙するのではなく、#MeTooを拡散してほしいです。あなたと同じように、ハッとする人が増えるように。そして声を上げた人を責めるのではなく、耳を傾けてほしいです。
#MeTooの中には「先輩や上司に風俗に行くことを強要された」「子どもの頃、大人に体を触られた」という男性のツイートもあります。それを見て、女性を買っておいて被害者ヅラかとか、そんなの女はずっと我慢してきたとか言いたい女性もいるでしょう。でも、お互いに「そんなことで被害者ぶるな」「お前だって加害者だろ!」と叩き合うのは不毛です。それじゃ嫌がらせや暴力に泣き寝入りするのが当たり前の世の中は変わらない。もう、うんざりです。
セクハラや性暴力の被害者たちが上げた声は、あらゆる暴力へのNOです。女性も男性も、幼い頃から「理不尽な目にあっても耐えるのが美徳だ」って繰り返し刷り込まれてこなかったでしょうか。学校にも職場にも家庭にも、そんなメッセージが溢れていないでしょうか。暴力は連鎖します。#MeTooはそれら全てに対する、NOなのです。
※AERA 2018年1月1-8日合併号