「それはそれでよかったんです。犬の散歩のときは1人の時間が持てましたからね。犬を相手に一日の出来事を話したり、仕事の愚痴を言ったりできたから、まだ幸せでした」

 事態が変わったのは、2014年に愛犬が亡くなってからだ。こぼす相手がいなくなり、居場所もない。安らげるのはトイレとお風呂の時間だけ。

 必然的に、自分の時間を求めて、だんだん帰宅が億劫になり、急ぎの仕事もないのに会社に居残り、週に2、3回はフラフラと街に出て飲みに行くようになった。今では、直帰するのは、週に1度あるかどうかというほどに減った。

「僕は愚痴を言って発散したいので、1人で飲みに行くことはほとんどありません。小遣い制なので月に飲み代に使えるのは2万円まで。やりくりが大変です」

 もし月に10万円使えるようになれば、もっと帰らなくなる予感はしている。(編集部・作田裕史)

AERA 2017年12月4日号