動物愛護の観点から外を保護し、避妊・去勢をして屋内で飼おうという動きが広まっているためだ。同様にイスタンブールでも、都市開発によって市場や路地裏など猫たちの居場所がなくなっていく懸念がある。

「イスタンブールの人口は1980年代の約400万人から、現在では1400万人に爆発的に増えました。比例して、猫の数も増えている。猫を避妊・去勢してコミュニティーで飼おうという努力はされていますが、猫の数が多すぎて、必ずしもうまくいっていません」

 だが、希望を持っている。

「なんでも半々ずつ、がトルコの文化だと思います。家と外、都会と自然のバランスも半々。そのほうが猫も人も暮らしやすい。イスタンブールでは土に触れない生活にうんざりして、田舎に移住する人も増えているんです。この映画を見た人が、このままのやりかたで街の猫たちを守りたいと思ってくれることを願っています」

 人は土から離れては生きられない。猫がすみやすい環境は、人間が暮らしやすい環境でもある。映画はそんなメッセージも発している。(文中敬称略)(ライター・中村千晶)

AERA 2017年11月27日号