Ceyda Torun/イスタンブール生まれ。夫で撮影監督のチャーリー・ウッパーマンと会社を設立。本作は初の長編ドキュメンタリー作品。夫と3歳の娘、11歳の猫と暮らす(撮影/遠崎智宏)
Ceyda Torun/イスタンブール生まれ。夫で撮影監督のチャーリー・ウッパーマンと会社を設立。本作は初の長編ドキュメンタリー作品。夫と3歳の娘、11歳の猫と暮らす(撮影/遠崎智宏)
「猫が教えてくれたこと」(東京・シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開中)配給:アンプラグド
「猫が教えてくれたこと」(東京・シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開中)配給:アンプラグド

 トルコ・イスタンブールに暮らすたちを映した映画「猫が教えてくれたこと」。米国で外国語のドキュメンタリー映画として史上3位の大ヒットに。監督は11歳までイスタンブールで育ったジェイダ・トルン(40)だ。

【映画の一場面はこちら】

「子ども時代、私の一番の親友は野良猫でした。父が亡くなり、母の再婚相手の仕事の関係でヨルダンのアンマンに移り、その後ニューヨークやロンドンなどで暮らしましたが、どこの都市にもイスタンブールのような猫と人間の関係はなかった。イスタンブールでは街の人々がみんなで猫の面倒をみて、それぞれが猫についての思い出話を持っているのです。これは映画に描くべきだと思いました」

「猫がいなければイスタンブールは魂を失ってしまう」──。人々がそう口にする街では、猫と人間が自然に共存している。カフェで上手にごはんをねだる白茶猫、いかついトルコ男をも虜にするキジトラ。カメラが追う7匹の猫たちは、常に自由だ。

 そんな猫たちについて街の人々が語る。猫に人生を救われたという人もいる。特に男性はメロメロ。

「そう、おもしろいことに猫に夢中なのは女性よりも男性のほうが多かった。トルコには『男性はより男性的でなければ』という文化があります。彼らは自分の優しい側面を猫との関係に見いだしてるのかもしれません」

 監督は3カ月間、2台のカメラを常に持ち、食事中でも機会があれば撮影した。「猫目線」を心掛け、猫の嫌がることは決してしない。11歳の猫と暮らす生粋の“猫LOVER”。日本の猫ブームも知っていた。

「だって私はハローキティで育ったんですから! 写真家の岩合光昭さんや宮城県の島で暮らす猫の短編ドキュメンタリー『ねこ島日記』も知っています。日本とトルコには多くのつながりがありますが、猫もそのひとつだと発見しました。ともに漁の文化を持っていることも関係していると思います」

 いま日本、とりわけ都市部からは野良猫の姿が消えている。

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