また、新潟県から参加した税理士の男性(52)は、7年前にがんの告知を受けた。現在は回復しているが、当時は余命5年と言われ、「このストーリーと同じ体験をした」と話す。今回の講座で最後に残したのは「感謝の気持ち」だった。

「回復して日常に戻ると、その気持ちを忘れがちになる。あの時の気持ちを取り戻したいと思い、参加しました」(男性)

 それぞれの回答に浦上さんが質問や感想を述べる。45分の共有時間はあっという間だった。

 この講座は欧米のホスピスで行われているものを一般向けにアレンジしている。過去に浦上さんは故人や遺族の気持ちに寄り添った葬儀をしたいと思い、看護師による同様の講座を受講。その感想をHPに掲載したところ、「ぜひ受けたい」という連絡が相次いだ。社会的ニーズを感じ、自ら開催することにしたという。

「中でもシェアの時間は一番大切。知らない人同士だからこそ、自分のことを気兼ねなく話せるのかも。人が亡くなる場所の8割が病院の今、日常から“死”が見えにくい。それだけに、興味を引いているのでは」(浦上さん)

 大切なものに囲まれて生きている。その「当たり前」に気づかされた2時間だった。(編集部・小野ヒデコ)

AERA 2017年11月20日号