リスナーの名前をできるだけ呼ぶ、「みんな」ではなく「君」や「あなた」といった、たった一人に話しかける。この考え方は、その後の番組作りの基礎となっていった。

 狙い通り、番組は若者を巻き込んだ社会現象を起こしていく。自主制作だった「帰ってきたヨッパライ」は放送をきっかけに280万枚以上の大ヒットに。数千個制作した「合格祈願」のお守りには応募が殺到した。しかし、社員パーソナリティーの時代は約6年で幕を閉じる。中継局が増え、社員よりも「よりフリーの立場で語れる人」が求められるようになったからだ。73年、亀渕が制作チーフとなり「タイトルとテーマソング以外」番組内容を一新。新たなANNがスタートする。

 フレッシュ、かつ手垢のついていないミュージシャンや芸人、タレントを起用。タモリ、所ジョージ、明石家さんまなど、数々のスターを生む「登竜門」的な存在となった。(編集部・市岡ひかり

AERA 2017年10月30日号より抜粋