慶應義塾大学/特に医学分野で強みを持つ。研究者の「厚み」では医学生理学賞の対象分野すべてで名前が挙がった(撮影/今村拓馬)
慶應義塾大学/特に医学分野で強みを持つ。研究者の「厚み」では医学生理学賞の対象分野すべてで名前が挙がった(撮影/今村拓馬)

 ノーベル賞と言えば京都大学と東京大学。この「常識」はすでに覆されつつあるが、これまでと異なる指標で全国の大学を眺めたら、私立大学や地方国立大学も手が届きそうだということが見えてきた。

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 世界が注目するノーベル賞は言うまでもなく、科学技術研究のトレンドを左右するビッグイベント。受賞するのは新しい分野をつくるような「とがった」研究を続ける研究者だが、実はこうした研究者の周囲には、新しい分野の広がりをつくっていく、優秀な研究者が多くいる。

 過去のノーベル賞受賞者の研究などを分析し、「イノベーションにつながる科学研究とはどんなものか」を調べている、政策研究大学院大学専門職の原泰史さん(35)は、こう話す。

「勝手に新しい分野ができてくるのではなく、研究者が主体的に研究仲間を増やしていくことで、研究分野が広がっていきます」

 例えば、昨年の医学生理学賞を受賞した大隅良典さん(72)は、東京大学助教授だった92年にオートファジーに関する論文を発表。96年に現在の自然科学研究機構基礎生物学研究所に教授として移ると、現在は東京大学教授の水島昇さん(51)や大阪大学栄誉教授の吉森保さん(59)など、優秀な研究者を採用した。

 その後、吉森さんらが00年に発表した、オートファジーの医学応用の可能性を示した論文によって、海外の医学分野の研究者がオートファジー研究に次々と参入。この分野の研究者の層は厚みを増した。

 研究者の「厚み」とも言えるこうした広がりが、その後のノーベル賞受賞につながったと言っていい。だとすれば、研究者の層の厚みを見極めることで、今後のノーベル賞受賞者が、どの分野でどの大学から出るのかが見えてくるはずだ。

 アエラ編集部は、文部科学省「研究力分析指標プロジェクト」の代表を務める自然科学研究機構特任教授の小泉周さん(45)の協力を得て、医学生理学賞、化学賞、物理学賞それぞれに関連する学問分野別に、大学に所属する各分野の研究者の層の「厚み」のある大学を調べた。

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