菅田:削ぎ落とすとは我慢をすること。劇中でいえば、食事制限もあるしセックスも禁止。試合に向かう期間は我慢なんです。単純に、トレーニングして筋肉量が増えるので体も熱くなる。その「たぎる感じ」が初めての経験でした。この映画をサーモグラフィーにかけたら、普通の映画より絶対赤いと思う。

ヤン:そうだね(笑)。僕もここまで長い期間、運動して体をつくったことはなかった。自分の体はここまで変えられるんだ、と実感できました。体を使って技術を身につけるというのは、何かを守れるようになることでもあるのかな。少なくとも自分が愛するものは守れる、という気持ちになった。運動はすればするほどいろんな面で自信がつく。エネルギーもどんどん感じるし、細胞分裂といういい経験もできた気がしますね。

菅田:細胞分裂! しました!

ヤン:建二と新次は精神的には成熟していないところがあったけど、それを認めつつ互いを見ながら生活して、片方が片方を超え、次にもう一人がもう一人を超えて大人になった。スポーツ映画は成長物語でもあることが多いけど、この作品も青年2人の成長の映画だと思います。

●公開後に気づくこと

菅田:いま思うんですが、僕が演じた新次は、建二と過去を埋めるだけではなく、お互いを超えていくことも含めて一緒に未来をつくるような、そんな関係になりたかったんだと感じます。

ヤン:映画を公開した後に気づくことは結構あるよね。

菅田:いっぱいありますね。

ヤン:映画は撮り終えた後、観客と出会う。俳優も撮って終わりではなく、その後も多くを学べる気がします。いい作品に参加することは、演技力を伸ばすだけではなくて、物事を理解したり、人生を見つめたりするうえでも大切なプロセスなのかな。

菅田:この映画もそうなるといいな。心に残る映画ですから。

(構成/フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2017年10月9日号