とつぶやいたのは、都立トップ高に通う高2の女子生徒だ。

「苦手な数学をこんなに楽しく勉強できたのは初めて」

 と顔をほころばせた。

 難関私立高校1年の男子生徒は、部活のアメフトとバンド活動で勉強時間が足りないのが悩みだが、

「今日1日で2次関数がわかるようになった。こんなに効率的に勉強できるなんて、数学に対する見方が一気に変わりました」

 Z会エデュースではこうした生徒の声を受け、9月から本郷校でAIと個別指導講師の組み合わせによる数学の「最速最短学習コース」を新規開講した。同社の首都圏地区本部長代理の稲葉尚樹さんは狙いをこう話す。

「生徒には、合格して終わりではなく、社会を変える人材に育ってほしい。そのためには受験勉強だけでなく部活や社会的な活動に打ち込む時間も必要です。AI教材の併用は、効率的に勉強するには打ってつけです」

 atama plusの稲田さんが、東京大学大学院情報理工学系を修了後、三井物産を経て起業した理由もそこにある。

 海外での仕事で痛感したのは日本人のプレゼン力、ディベート力、ディスカッション力の弱さ。子どもたちにはこうした「生きる力」をつけてほしいのに、「生きる力」か「基礎学力」か、二者択一の議論が続く日本の状況がもどかしかった。

「どちらも必要なのですが、時間は限られていて、先生も子どももいっぱいいっぱい。AIの活用で基礎学力の習得時間を半減できれば、生きる力の習得に時間を割ける」(稲田さん)

 AIを活用したタブレット教材は、やはり教育ベンチャーの「RISU Japan(リスジャパン)」が年中後半から小学生を対象に「RISU算数」を開発。中学校の数学までをカバーしている。「COMPASS(コンパス)」は小学校高学年から中学生を対象とする「Qubena(キュビナ)」を開発。全国の塾27法人が導入済みだ。

 atama plusの教材が高校領域をカバーしたことで、算数、数学については小中高すべての範囲でAI教材が出そろった。いまは塾などでの利用が中心だが、どの企業も公教育への進出を視野に入れている。

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